福島を思い出して 倉本聰さん「心洗い流す涙を」

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「ノクターン―夜想曲」への思いをあらためて語る倉本さん

 演劇「ノクターン―夜想曲」を書き下ろした脚本家倉本聰さんは、報道関係者らに公開した舞台を厳しい視線で見守り、終了後の稽古でも出演者に助言を繰り返した。報道陣の取材に応じた倉本さんは、本県復興への願いを託し、脚本家としての情熱を傾注した作品への思いを語った。(渡辺哲也)

―10日に全国公演の初日を迎える作品への思いは。

 「ひと言で言えば鎮魂歌だ。福島の風化を食い止めたい。この作品を通して、被災した福島をもう一度思い出してほしい。都会では完全に忘れてしまっているが、今なお福島では苦しんでいる人たちがいることを全国の人たちが思い出してほしい」

 ―脚本や登場人物、配役が多く変更されたが、その意図は。

 「もう少し普遍的な話にしたくて台本を手直ししてきた。新たに新聞記者をモデルにした登場人物を加えた。福島第1原発の廃炉作業の現場で働く富良野塾の塾生の話なども取り入れ、登場人物の参考にした。福島の取材では悲惨な話も多く聞いたが、各地で取材した人との出会いの中で、『人とはいいな』と思える時が多々あった。その思いを台本に書いた」

 ―公開された舞台を見た観客には涙を流す人もいたが、本県の上演を待ち望む県民へのメッセージは。

 「正直、福島の方にこの作品が、どのように思われるのかが怖い。福島で幾度も取材したが、自分たちが気が付かないところで、福島の人たちを傷つけてしまうのではないかと思うこともある。ただ、涙を誘うならば、被災を思い出しての涙よりも、心を洗い流すような涙であればうれしい」

劇場にすすり泣き 倉本聰さん、富良野で舞台公開

劇場にすすり泣き 倉本聰さん、富良野で舞台公開

原発事故の不条理さや被災地・福島の人々の思いを訴える舞台「ノクターン―夜想曲」=5日、北海道富良野市・富良野演劇工場

 最高気温が氷点下6.9度の極寒の北海道・富良野で5日、報道関係者に公開された倉本聰さんの演劇「ノクターン―夜想曲」。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故の風化に強い警鐘を鳴らした演劇は、鑑賞した地元の演劇関係者、本県からの避難者らの心に深い感動を与えた。被災地「福島」の人々の姿を熱く演じた役者は、本県への特別な思いを胸に全国公演に臨もうとしている。

 舞台が終盤を迎え、幕が下りようとした静寂の劇場にすすり泣く人の声が漏れた。舞台で展開される、被災地の本県で懸命に生きる人々の姿が、富良野GROUP(グループ)の活動を支える北海道の演劇関係者、長年のファンの心を打った。

 車で約4時間かけて、北海道岩内町から富良野に駆け付けた高橋邦男さん(66)は「福島の今を鮮明に映し出した舞台だ。自宅は泊原発に近いので、福島の現実は他人事ではないとあらためて思った」と興奮冷めやらぬ表情で語った。

 また、同劇団を支援する占冠(しむかっぷ)村の山本敬介さん(48)も「遠く離れた北海道では忘れかけていた福島の現実を強烈に突き付けられた」と話した。

 原発事故で南相馬市小高区から富良野市に移住した中里範忠さん(76)は万感の思いでこの舞台を見終えた。倉本聰さんと交流を深める中で、制作過程を見続けてきた中里さんは「鎮魂の思いを強く感じた。震災、原発事故を忘れたい福島の人にとっては胸をつかまれ、揺さぶられるような思いをするかもしれないが、忘れてはいけないことが何かを考えさせてくれた」と思いを語った。

「ノクターン―夜想曲」全国公演へ 県内は2月から

 全国公演に先立ち、報道関係者らに公開された演劇「ノクターン―夜想曲」。倉本さんの被災地・福島への思いが詰まった作品が完成した=5日、北海道富良野市・富良野演劇工場(渡辺哲也)

 脚本家倉本聰さんが東日本大震災、東京電力福島第1原発事故で被災した本県を舞台に書き下ろした演劇「ノクターン―夜想曲」は5日、全国公演を前に北海道富良野市で報道関係者らに公開された。

 富岡町を舞台に震災と原発事故後の人間模様が展開される作品。一昨年8月の「実験舞台」後、倉本さんが本県での取材活動から、写真を撮ることよりも人の命を救うことを優先した後輩記者を亡くした先輩記者の苦悩、原発から避難するのか否かで葛藤する親友同士の姿など細かい部分の描写を加え、完成した。

 公開された舞台では、新たな登場人物を加えた出演者が震災と原発事故の不条理や風化への警鐘を訴えた迫真の演技を披露し、鑑賞者の涙を誘った。全国公演は10日に富良野市で初日を迎える。県内では福島民友新聞創刊120周年記念事業などとして、2月から県内5会場で上演する。