「ノクターン--夜想曲」南相馬で県内初演 感動を呼ぶ舞台

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「ノクターン―夜想曲」南相馬で県内初演 感動を呼ぶ舞台

県内初演を迎えた「ノクターン―夜想曲」。被災者の思いを訴えた舞台が感動を呼んだ=南相馬市・ゆめはっと(矢内靖史)

 県内初演は相双地方のほか、県内外から詰め掛けた観客で満員となった。観客は家族の絆の大切さや原発事故の不条理さを描く舞台を自らの境遇や思いと重ねながら見入った。終幕後は観客からのカーテンコールが続き、倉本さんが主宰する演劇集団「富良野GROUP(グループ)」のメンバーと舞台に登場、観客の思いに応えた。

"心の奥底を代弁" 「ノクターン―夜想曲」感動の拍手響く

心の奥底を代弁

カーテンコールで観客から花束を受ける倉本さん

 南相馬市のゆめはっとで1日に県内初演を迎えた倉本聰さん(80)脚本の演劇「ノクターン―夜想曲」。会場には震災、原発事故から丸4年を迎えようとする中で今なお避難生活を続ける相双地方の住民も詰め掛け、被災者の思いを代弁する舞台を見つめた。カーテンコールでは観客からの拍手が鳴りやまず、感動の大きさを物語った。会場には、劇中に登場する詩を書いた同市の詩人若松丈太郎さん(79)も駆け付け、舞台を見守った。

 「表層的な悲劇ではなく、心の奥底を代弁してくれた」。同市小高区から同市鹿島区に避難する安部あきこさん(68)は、原発事故の不条理さを描く精緻な描写に声を詰まらせた。「家があっても戻れない避難者のつらさ、それぞれの苦境をよくここまで表現してくれた」。安部さんは食い付くように舞台に見入った。

 劇中には患者を病院に残して避難するかどうかの判断を迫られた看護師が、苦悩を吐露する一幕がある。元看護師で同市原町区の渡部京子さん(61)は、震災直後の状況について倉本さんの取材を受けた経験を持つ。「ありのままの原発事故が描かれていて、若い看護師が悩んでいたことを思い出した」と振り返った。

 「この舞台は原発事故後の将来へ向けた警鐘」。浪江町から相馬市に避難する根本洋子さん(72)は、舞台にちりばめられた、豊かさを追求する現代社会への警句に息をのんだ。舞台の主人公と同じく、家族を津波で失った友人を持つ。「気持ちが重なり、最後まで引き込まれた」

 南相馬市鹿島区の岡孝雄さん(64)は、震災、原発事故の風化に怒りをぶつける主人公に自身を重ねた。「風化に一石を投じる舞台。こういう作品が必要なんだ」と力を込めた。

詩人の若松さん「万感の思い」

詩人の若松さん「万感の思い」

公演の後、倉本さんと対談する若松さん(右)

 若松丈太郎さんがチェルノブイリに赴き1994(平成6)年に創作した詩は、無人となった「危険地帯」を浜通りの町村に当てはめ、本県でも起こり得る事故と警鐘を鳴らしていた。福島第1原発事故後に「予言の詩」として注目された若松さんの詩が劇中で「ピエロ」のセリフに織り交ぜられた。「詩は読者が限られるが、千人以上を集めて全国公演される演劇の中で語られることは本当にありがたい」。若松さんは県内初演を万感の思いで見届けた。

 公演の後、倉本聰さんと若松さんは舞台裏で再会。倉本さんが「今回の脚本のスタートは若松さんの詩が原動力」と感謝すると、若松さんも「(倉本さんとは)同じ世代でもあり、発想の視点など共有できていたと思う」と応じ、本県で取材を重ねながら脚本を書き上げた労をねぎらった。

 4日からの東京公演、3月の県内4公演などを控える。風化への警鐘を鳴らす倉本さんは「東京の反応が知りたい。福島公演も含め、より良い作品になるよう手直ししていく」と意欲を見せ、若松さんも「(ノクターンのメッセージを)多くの人に受け止めてほしい」とエールを送った。