残暑の日。福島市山口、文知摺観音の裏山を仰ぎ見る。正面にアカマツに覆われた岩山が峨婁山(がろうさん)。視線を尾根伝いに左へ移すと高松山(標高195メートル)がある。
ふもとの安洞院の横山俊邦住職(59)は「高松山は富士山のような形の山の意味。近くの寺の高松山地蔵院は400年ほど前まで、この山にあった」と話す。
登山口は、山の西側の鹿島神社付近と、山の南側の安洞院内の2つ。両登山口にある案内板によると安洞院―山頂―鹿島神社が約2キロ、所要時間60分。鹿島神社に至る道路が車両通行止めなこともあり、安洞院にお願いし境内から登った。
高台にある地蔵尊の裏側に登り口を見つけ、やぶを分け登りだす。足元は草が刈られ手入れされているが所々、岩が露出する。
30分足らずで眺望の開けた岩場にたどり着き小休止。西の方角に信夫山を中心に広がる福島の街を見下ろす。吾妻連峰はかすんでいるが、水田の幾何学模様や競馬場の大スタンドなど街の姿が楽しい。
岩場から少し進むと「高松山」「杵沼」「鹿島神社」の標識がある分かれ道。左に折れ足元に注意しながら切り立った岩場を進む。山頂への標識が現れ、それを頼りに急な斜面を登り切ると、再び福島盆地の眺望が広がった。
小さな石のほこらの周囲は、休息に絶好の木陰。下界から聞こえるセミ時雨は遠く、あたりはすでに秋の虫の音ばかりだった。
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