いわき市と古殿町、平田村にまたがるなだらかな稜線（りょうせん）が流れる独立峰。その名の通り山頂付近の猿子平には約１００アールに及ぶシバ草原が広がる。
　県道いわき上三坂小野線から林道に入り、山頂直下の駐車場まで上がる車道を過ぎると間もなく、登山口のある駐車場に着く。車を止め、ケヤキや桜、杉林に囲まれた登山道を登る。木々は市民有志らによって植樹されたものが多く、標識で樹木の名前を確認しながら登ることができるのが楽しい。登り始めて十分もすると南東側に牧場が広がる。いわき市営の牧場で、５月ごろから１１月ごろまで牛や馬を放牧している。
　何度か車道を交差しながら歩を進める。上がった息を途中二カ所ある水飲み場で整える。シラカバ林を抜けると猿子平に到着。開放的なシバ草原の中に滑り台やジャングルジム、炊事場などが整備されている。例年夏には家族連れのキャンプ客が大勢訪れるという。
　猿子平から山頂へは十分ほど。頂上には展望台「芝山富士見台」があり、３６０度の眺望を堪能できる。東には水石山が間近に迫り、北西には安達太良山や磐梯山がうっすらと望めた。
　展望台付近に「富士山まで２６０キロ」と書かれた標識が立っている。芝山自然公園美化協力会長の田子元彦さん（６７）は「天気と目がうんと良ければ富士山が見えるかもしれない」と笑いながら話してくれた。
　帰途、展望台下の芝山観音に手を合わせ、ゆっくりと山を下った。
（おわり）