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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【 2 】 くらし
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便利さ求めず自然守る
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茅ぶき屋根、白壁の土蔵、作業小屋、炭焼き窯、畑の前には雑木林。今では見ることが少なくなった農家の暮らしの風景が広がる=二本松市
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杉林を背にした茅(かや)ぶき屋根の民家。杉内鉄幸さん(61)=二本松市=はそこで生まれ育った。母屋に隣接する蔵や小屋、そして雑木林に囲まれた畑の脇には炭焼き窯がある。ここでは里山の農家の暮らしと風景が守り継がれている。
杉内さんは親から農業、養蚕業を受け継いだ。養蚕は採算が合わなくなりやめた。今は無農薬で化学肥料を使わない農業に取り組んでいる。かつて桑畑だった所にはツバキが植えられ、今年初めて収穫した種子を間もなく油に加工するという。生産した米、雑穀、根菜類を消費者に直接販売することで、安全・安心な「食」を届けている。
林にすむ生物を思う
12年前、所有する山林の約9割を保安林に指定してもらった。杉内さん自身も許可を取らなければ伐採ができなくなった。林にすむ生物を守りたいという思いからだ。日本野鳥の会、県自然保護協会の会員としても活動し、自身の山林も含めフクロウやムササビのための巣箱を長年設置し続けている。
明治初期に建てられた家はほぼ当時のまま。「できるだけ化石燃料は使いたくない」と現在もまきで風呂を沸かし暖を取る。「水道は井戸水なので、あとは電力の自給」と杉内さんは笑う。しかし、その目には決して夢物語ではないという決意が見えた。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 茅ぶき 】
カヤ(ススキ、チガヤ)を材料にした屋根の構造。かつて、村落周辺には茅場と呼ばれるススキ野原があった。
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