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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【 9 】 鎮守の森
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学術価値高い照葉樹林
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タブノキなど葉の緑と鮮やかなコントラストを描くスダジイの黄色い花=いわき市平豊間・八幡神社
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いわき市の海岸沿いを南下すると、山の一部が黄金色に染まり始める。スダジイの花だ。スダジイは、照葉樹林を代表する樹木。照葉樹の自然林は「鎮守の森」として守り継がれてきた。
いわき市平豊間の八幡神社拝殿の西側には、一年を通して緑豊かな照葉樹の森が広がる。初夏、スダジイの花が咲き始めると森の様相は一変する。ブロッコリーのようにもっこりと茂った高木に黄色い花が咲き、タブノキの葉の緑と鮮やかなコントラストを見せる。
双葉郡からいわき市にかけて照葉樹を調査している県文化振興事業団の山内幹夫さん(55)によると、スダジイの北限は南相馬市。かつては広範囲に連続していたと思われるが、多くはコナラなどが交じる二次林に変わった。現在、照葉樹の自然林は神社や寺の周辺に残り、学術的にも価値が高いという。
漁村に住む人にとって、「板子一枚下地獄」という言葉が象徴するように漁は死と隣り合わせ。「神仏への信仰が厚く、鎮守の森を守る一因になっているのでは」と山内さんは話す。
植生史の資料保全は責務
いわき市沿岸の照葉樹林は地球規模の気候変動によって海水面が変化、形成されたらしい。「植生史を示す照葉樹林の保全は現代人の責務」と山内さん。地球温暖化が叫ばれている現在ならなおのことだ。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 スダジイ 】
ブナ科シイ属。高さ15〜20メートルに達する常緑広葉樹。ドングリは、ほのかに甘く生で食べられる。
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