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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【 15 】 葉タバコ
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手間惜しまぬ栽培農家
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黒石山を背に葉タバコの下葉を収穫する吉田さん夫妻=田村市船引町堀越
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黒石山を背に広がる広大な葉タバコ畑。大空でヒバリがさえずる中、大きな緑の葉の間を、大きな日よけの付いた収穫機が進む。畑の外から中の様子はうかがえない。軽やかなエンジン音とともに下葉を摘み取る生産者の姿が見えてきた。
田村市船引町堀越の吉田幸一さん(54)は、1.7ヘクタールのほ場で葉タバコを栽培する。しかし、その約8割は借地。高齢化や担い手不足によって葉タバコ耕作をやめた農家から借り上げているという。「広い面積をやらないと割に合わない。容易じゃねえよ」
葉タバコ生産には大変な手間が掛かる。昔の生産者は寝る暇もないほど働いた。品種の変更や機械化によって体は楽になったと吉田さん。それでも、1年が12カ月では足りない忙しさには変わりがない。
「死ぬまでタバコの生産を続ける」。20年来付き合いのあるJTの職員との出会いの中で誓った決意だという。「全国に仲間がいる。次の世代につなげていきたい」
地域環境の保全にも力
吉田さんは地区の「堀越保全会」の会長を務める。花の植栽、農地保全、水生生物の調査などを子どもたちとともに行っている。
先日、葉タバコの根元にヒバリの巣を見つけたと吉田さん。「もう巣立ってるかな」と空を見上げながらつぶやいた。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 タバコ 】
ナス科タバコ属の一年草。花期は7月。葉に養分がいかなくなるため、花は咲かせずに摘み取られる。
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