|
かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
|
【 38
】 松川浦
|
|
豊かな生態系支える干潟
|
|
夜明けと共にアオノリの摘み取り作業に出発するボート。ノリ棚が美しい幾何学模様の陰影を作る=相馬市・松川浦
|
日本百景の一つに数えられる名勝、相馬市の松川浦。全国有数の養殖ノリの産地として知られ、冬から春にかけてアオノリの収穫が盛んに行われている。40万本ともいわれるノリの支柱に支えられるノリ棚の作る幾何学模様の陰影は、人の暮らしと自然が織りなす造形美だ。いてつく空気を切り裂くようにボートのエンジン音が近づいてきた。青い静寂の世界が朝焼けに染まる。新しい一日が始まった。
魚介類の天然の養殖場
松川浦は宇多川と小泉川の河口に開けた潟湖(せきこ)。豊富な魚介類をはぐくむ天然の養殖場として、古くから地域の人々に多くの恩恵をもたらしてきた。潮が引くと東北では最大規模の干潟が現れる。カニ、貝、ゴカイといった生物は、海や川が運んでくる汚濁物質や水中のプランクトンを食べて水質を浄化させている。また、それらの生物は鳥や魚などの餌になる。それぞれが、豊かな生態系を支えているのだ。
松川浦は希少生物の宝庫でもある。県内で唯一生息が確認されているヒヌマイトトンボは、汽水域のヨシ原でしか生きられない。植物もほかでは見られない塩性湿地や砂浜といった特異な地域に育つ絶滅危惧(きぐ)植物が数多く生育する。
干潟一帯は、こうした多くの生物が潮の満ち引きに合わせて活動し、共存している。
|
(写真と文・矢内靖史)
|
【 松川浦 】
古くは万葉集にも詠まれ、大小の島や岩が点在する。アサリの産地で潮干狩りシーズンには、家族連れでにぎわう。
|
|
民友携帯サイト
右のコードを読み取り、表示されたURLでアクセスできます。
|
|
|
|