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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【 39
】 ハクチョウ
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水田に飛来 自力で越冬
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水をためた田んぼに集まるハクチョウの群れ。水鳥たちのオアシスになっている=郡山市逢瀬町多田野
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毎年、県内で冬を越していたハクチョウにとって、まさに青天のへきれきだったに違いない。突然、餌がもらえなくなったのだから。鳥インフルエンザの感染防止のため、昨冬から県内各地で餌付け自粛が始まった。冬期間、多くの家族連れらでにぎわいを見せたハクチョウ飛来地は、ほとんど人影もなくなり、飛来したハクチョウは困惑したように右往左往していた。
餌付けなく逆に数増える
現在、餌付けが行われなくなった飛来地には、ほとんどハクチョウの姿はない。餌を求めて分散したからだ。ハクチョウの姿が見られなくなった場所がある一方で、逆に増えた地域もある。郡山市逢瀬町多田野の農業増戸義治(60)さんの水田もその一つ。増戸さんの水田は不耕起栽培を行っているが、一部は冬期間、田に水を張ったままにする「冬期湛水(たんすい)」を実践している。「ハクチョウを呼ぼうと思って始めたわけじゃないんです」と増戸さん。水田面を酸欠にすることで春先、雑草の発生を抑制する効果があるからだ。水鳥のふんが天然の肥料となる効果もあるという。
昨年から、ハクチョウの飛来が明らかに増えたという。「水を張っていなくても、田起こししていない田んぼなら降りて落ち穂をついばんでいます」と増戸さん。自力で生き抜こうとするハクチョウを見て目を細めた。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 冬期湛水 】
水田に冬期も水を張る農法。「ふゆみずたんぼ」ともいわれ、環境・農業の両面から全国的に注目を浴びている。
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