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かつて、人々の生活と密着し暮らしを支えてきた県内里山。燃料や農業に必要なものを得るために手を入れてきた。変わりつつある現在の里山の風景、森づくり、行事など、人と森のかかわりとともに、そこに息づく生物を紹介する。
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【42】 真綿かけ
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主婦が伝える伝統の技
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柔らかな日差しが注ぐ縁側で、黙々と繭を伸ばす佐藤さん=伊達市保原町
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日差しが注ぐ暖かな縁側に座って、黙々と手を動かし続ける一人の女性−。「入金真綿」の名で知られ、全国一の生産量を誇る伊達市保原町の真綿作りは、こうした年配の主婦によって支えられている。佐藤悦子さん(68)=同市=は「真綿かけ」を始めて既に半世紀以上。伝統の技を今に伝える。
「年を取ってもできる仕事。教えてくれた親に感謝しないと」と佐藤さん。煮て柔らかくしたカイコの繭を水の中で一つずつ指で延ばし、袋状に幾重にも重ねていく。手の動きはよどみなく、優雅でさえある。それでも「まだまだ上手になりたい」と向上心を忘れない。
幅広い用途の天然繊維
現在、佐藤さんら5人の職人に真綿かけを頼んでいる「石川彦太郎商店」の石川隆さん(60)によると、“入金”の由来は「品質が良いため前金で取引していたことから」など、いくつかの説がある。出来上がった真綿は主に結城紬(つむぎ)などの原糸となる。また、軽い、暖かい、柔らかい、蒸れないといった特性を持つ天然繊維のため、健康衣料品や寝具、介護用品としても注目を集めている。
佐藤さんの手は、長年、水仕事をしているとは思えないほどツルツルして張りがある。繭玉の持つ美容効果によるものだろう。「若いころは、もっときれいでしたよ」とほほ笑んだ。
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(写真と文・矢内靖史)
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【 入金真綿 】
戦前は「背負まわた」など防寒具としても普及した。問い合わせは石川彦太郎商店。電話024・576・2712へ。
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民友携帯サイト
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