【 笹正宗酒造 】 投資惜しまず味保つ<喜多方市>

 
瓶詰めされた日本酒にラベルを貼り付ける従業員。出荷まで徹底した温度管理で品質を保つ=喜多方市・笹正宗酒造

 北西に飯豊連峰を望み、豊かな伏流水が絶えず湧き出る。コメを含め酒造りの最適地に拠点を置く笹正宗酒造(喜多方市)を訪ねると、創業約200年の歴史を物語る重厚な門構えに迎えられた。

 昭和50年代前半に全国でもいち早く純米酒を発売。地酒ブームの火付け役となり、脚光を浴びた。現在も系譜が受け継がれ、杜氏(とうじ)で専務の岩田悠二郎さん(29)=写真・下=は「純米酒はすっきりしていて食事が際立つ。ニシンのしょうゆ漬けなどが合う」と伝統の味を評する。

 「仕込んだ時に良くても、飲む時に品質が落ちては駄目。そのための設備投資は惜しまない」。量から質へと転換期を迎え、笹正宗酒造は酒蔵の在り方を根本から見直している。数年前に1時間で約800本を瓶詰めできる製造ラインを整備し、3月には約300立方メートルの巨大な冷蔵庫を導入した。作業の効率化や徹底した品質管理の背景には「造りっぱなしの時代は終わった」との思いがある。

 定期的に利き酒するなど研究にも余念がない。そこで出会ったのが金光酒造(広島県)の「賀茂金秀 特別純米13」。原酒を13度の低アルコールで仕上げる高い技術から生まれた銘酒が、岩田さんの意識を変えた。「原酒なのに、まろやかで味のバランスが素晴らしい。自分も幅広い酒の楽しみ方を提供しなければならない」

 6月には、夏の爽快感を意識したアルコール度数の低い商品の発売を検討しているという。「教科書通りのままでは杜氏を名乗れない。経験で判断できるようになりたい」。次世代を担う蔵人の姿が頼もしく見えた。



笹正宗酒造

 来日のカーター氏愛飲
 1818(文政元)年創業。酒蔵の母屋は、喜多方市の国登録有形文化財「甲斐本家蔵座敷」と同じ大工が大正期に建築したもの。1979年の東京サミットで来日した元米大統領カーター氏が「笹正宗 純米酒」を愛飲したという逸話が残る。昨夏、世界最大規模のワイン品評会「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2015」で純米酒部門「福島トロフィー」を受賞。笹正宗酒造(電話)0241・24・2211

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