【 名倉山酒造 】 醪の音色を聞き取る<会津若松市>

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低温殺菌装置で殺菌し、出荷される「月弓」=会津若松市・名倉山酒造

 目指すのは"きれいなあまさ"。「甘みと酸味のバランスの取れた、うま味のある酒を造りたい」。会津若松市の中心部にある名倉山酒造の4代目社長松本健男さん(58)=写真・下=は、理想の酒をこう語る。

 大正時代に創業した酒蔵は、時代に先駆けた吟醸・純米酒造りなど革新的な取り組みを続けている。「酒造りは杜氏(とうじ)や蔵人がするんじゃない」と松本さん。思わず真意を聞き返す。「酒は酵母と麹(こうじ)が造ってくれる。われわれは微生物がよく働くことができる環境を整えるだけ」

 良い環境づくりには、温度や湿度の変化に対する微生物の「声」を聞くことが大切という。松本さんはこれを「醪(もろみ)の音色を聞く」と表現する。五感をフルに使って変化を感じ、糖度やアルコール度数などのデータを読む。両方できて初めて音色を聞き取られる。

 松本さん一押しの銘柄は、季節の移ろいを楽しめる「月弓(げっきゅう)」と「月弓かほり」。月弓は秋の夜長に楽しんでもらおうと考案した酒で、2種類の酵母を使い深みのある味わいに仕上げた。料理に合う酒で、少し温めてもおいしい。対をなす月弓かほりは、うららかな春の食前に飲んでもらおうと開発。その名の通り、華やかな香りが特徴だ。「こんな酒が飲みたいと思って酒造りをするから、大変さより楽しさが大きい」と松本さん。音色を聞き、季節を感じ、酒を味わう。緻密な研究や試行錯誤の中にも風流の心を忘れない、粋な酒造りだ。


 

名倉山酒造

 取引先への道中の眺め
 1918(大正7)年に「竹正宗酒造」の名で創業。その後、初代善六が取引先への道中、猪苗代湖岸で眺めていた「名倉山」を蔵の名にした。よりよい環境整備のため機械化も進めている。温度と湿度を一定に保つ麹(こうじ)室のほか、瓶詰めに低温殺菌装置を取り入れ、栓をした酒瓶をお湯のシャワーで殺菌する。瓶詰め後の酒質が安定、香りも逃がさないという。2009年から、全国新酒鑑評会7年連続金賞受賞。名倉山酒造(電話)0242・22・0844

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