【 若清水酒造 】 毎日の晩酌に寄り添う<平田村>

 
酒の熟成具合などを見る「呑切(のみき)り」を行う喜告さん

 一日を終えてほっと息をつく晩酌の時間。今回訪ねた若清水酒造(平田村)は、そんなひとときに寄り添うような酒造りを大切にしている蔵元だった。

 迎えてくれたのは、8代目・佐藤晋也社長(72)の長男で杜氏(とうじ)の喜告(よしのり)さん(31)。地元で親しまれる「晩酌酒」として、まず普通酒の「四季の花」を紹介してくれた。1751(宝暦元)年の創業時から造り続けている伝統の酒だ。昔ながらの製法で熟成させ、うま味を乗せているという。「毎日、どんな料理にも合うように」。このこだわりが、地元で長く愛される理由のようだ。

 もう一つの代表銘柄は、蔵元名を冠した「若清水」。以前は普通酒のみだったが、約6年前に蔵に入った喜告さんが特別純米、純米吟醸、大吟醸の3種類を造り、シリーズ化させた。しかし当初は思うような味にならず試行錯誤を重ねた。

 苦労を承知で新しい酒造りに挑戦したのには考えがあった。「まず飲んでもらうことで蔵のことを知ってもらいたい」。同酒造は、どぶろくをイメージした「やまんば」や数年から十数年寝かせた古酒など、根強いファンを持つ個性的な酒もそろえる。こうした酒の「入り口」として、飲みやすさを意識した若清水の3種類を造り上げた。

 喜告さんは「しっかりとした味わいのある酒を造っていきたい。うちの蔵でしかできないものを、ゆくゆくは強みにしていけるはず」と展望を語る。晩酌の楽しみがまた増えそうだ。



若清水酒造

 蔵元名は公募で決めた
 創業は1751(宝暦元)年で、260年余りの歴史を誇る。1944(昭和19)年、造り酒屋数社で「石川郡酒造」を設立、63年に解散後、独立して現在の形になった。蔵元名は公募で決めたという。酒造りに使用する主なコメは地元産の「チヨニシキ」と「夢の香」。蔵元近くの山林に湧き出る清水を仕込み水に使っている。初代当主がこの清水を見つけたことから、この地で酒造りが始まったという。若清水酒造(電話)0247・54・2019

若清水酒造