【 藤井酒造店 】 水にこだわり味磨く<矢祭町>

(数字はいいね)  このエントリーをはてなブックマークに追加 
完成した酒を瓶詰めする従業員=矢祭町・藤井酒造店

 本県最南端に位置する矢祭町で雄大な自然を生かした酒造りに取り組む藤井酒造店。銘柄「南郷」は、辛口で口当たりの良い銘酒として愛されている。

 清流久慈川の伏流水と昼夜の寒暖差が大きい山間部の気候が酒造りを支える。酒造りを統括する8代目社長藤井健一郎さん(68)=写真・下=は「水、気候、酵母が日本酒の味を決める三大要素。矢祭町は水と気候が良い」と話す。

 水へのこだわりは特に強い。大学卒業後に東京の卸業者で経営を学び、約35年前に帰郷した藤井さんが最初に着手したのが井戸の掘削だった。より良い水を求めたことで、伝統の味に磨きを掛けた。

 藤井さんの一押しは「純米吟醸うらら」。5月生まれの藤井さんが「春のうららかさや穏やかさを感じられる酒を造りたい」と約10年前に開発した。原料米に広島県産のハッタンニシキを使用し、豊かな香りと飲みやすさが特徴だ。「甘さや辛さなど、いろいろな味を味わえる」と常温から人肌ほどで飲むことを薦める。

 「自分の飲みたい酒を造る」が信条。食生活が変わり、若者の味覚の変化も理解する一方、「自分の好きな味だから、他人に薦められる」と従来の酒造りを変えるつもりはない。

 藤井さんの好きな酒は「花火のように口の中でぱっと広がってすっと消える酒。味がすぐ消えるから、また飲みたくなる」という。

 理想の味を語る力強い言葉に、職人としてのこだわりを感じた。

藤井酒造

 地域への愛着込め命名
 創業は1833(天保4)年で、180年余りの伝統を誇る。銘柄「南郷」は南北朝時代、奥州最南端に位置する東白川郡が南郷と呼ばれていたことに由来。気候が温暖で人情細やかな地域への愛着を込め名付けられた。人手が必要とされるところも機械化せず、昔ながらの酒造りを続ける。全国新酒鑑評会で1991(平成3)年に金賞受賞、東北清酒鑑評会で85~94年、10年連続金賞受賞などの実績を誇る。藤井酒造店(電話)0247・46・3101

藤井酒造店