【 会津錦 】 「こでらんに」鍵は飯米<喜多方市>

 
発酵を平均化させるための作業「かい入れ」に取り組む杜氏の斎藤さん=喜多方市・会津錦

 「こでらんに」「さすけね」「なじょすんべ」。会津錦(喜多方市)の代表銘柄はいずれも会津で聞き慣れた方言だ。一体どんな酒なのか。興味を抱かせるユニークな発想の蔵元を訪ねた。

 「最初は『面白い名前の酒』と呼ばれていたが、徐々に浸透してシリーズ化した」。杜氏(とうじ)で専務の斎藤孝典さん(40)は発売当初を振り返る。元々、辛口に造ろうとしていた酒が甘口となり、偶然にも「こでらんに」のイメージと重なったという。

 独自路線を歩むのは銘柄だけではない。会津錦は原料に酒造好適米を一切使わず、市内で収穫された県オリジナル品種「天のつぶ」などの飯米で「本物の地酒」を目指している珍しい酒蔵だ。飯米は溶けやすく、温度や給水などの管理が難しい。それでも「普段から食べているコメの方が体になじみやすい」を信念に試行錯誤を続けている。

 昨年からは、東京・銀座の日本料理店と天のつぶの地方番号「福島9号」にちなんだ新銘柄「Qku 純米大吟醸」を共同開発。酒袋に入れた「もろみ」をつるして滴り落ちる最良の部分だけを集める技術を取り入れ、高級感のある酒に仕上げた。「炊きたてのご飯みたいな香りがする」と評判だ。

 会津錦で唯一の辛口商品「すっぺったこっぺった」も人気を集めている。言葉の意味は「ごちゃごちゃ」。頭でごちゃごちゃ考える前に、まずは飲んで感じる。それが地酒を愛する人間としての基本姿勢かもしれない。




会津錦

 伊勢の式年遷宮で奉納
 江戸末期の大火で創業からの記録を失い、蔵元の詳細な歴史は不明。明治以降の資料によると、戦時中に一時休業したが、1947(昭和22)年に河沼酒造の西羽賀工場として酒造りを再開。斎藤酒造店を経て、67年に会津錦と改称した。銘柄に「吉乃川」や地名を冠した「羽賀泉」などを使用した時代もある。2013年には、いわき市遠野町産コシヒカリで仕込んだ純米酒を伊勢神宮(三重県)の式年遷宮で奉納した。会津錦(電話)0241・44・2144

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