【 花泉酒造 】 四季折々...旬の味わい<南会津町>

 
新酒の仕込み作業に励む蔵人=南会津町・花泉酒造

 豪雪地帯の南会津町南郷地域にたたずむ白壁造りの蔵の中は、新酒の仕込み作業に励む蔵人たちの熱気に満ちていた。花泉酒造は蔵人全員が地域の風土に精通した南郷在住者。水やコメなど酒造りに必要な全てを地元・会津産にこだわり抜いて生まれる地酒は、全国的な人気を誇る。

 中でも代表銘柄の「ロ万(ろまん)」は、酒屋に並べば瞬く間に完売する好評ぶり。上品な香りとまろやかな味わいが特徴で、女性を含め若い世代のファンも多い。日本酒離れが進む中、代表社員の星誠さん(40)=写真・下=が「新たな銘柄を造って全国展開を目指す」との思いで10年ほど前に発売した酒だ。

 当時、花泉酒造の酒は深くしっかりとした味わいの「花泉」の一枚看板だった。杜氏(とうじ)をはじめ蔵人が試行錯誤を重ねて新しい味わいのロ万を生み出し、初めて試飲した際の心境を星さんは「すごい酒だと確信した」と振り返る。手応え通り、新たなファン層の開拓につながり、今では北海道から九州までの広い範囲で親しまれている。

 ロ万はシリーズ商品で、四季折々に旬の味わいが楽しめる。例えば、12月出荷の「一ロ万(ひとろまん)」は新酒ならではのフレッシュさが特徴で、星さんいわく「新年を祝うのに適した酒」。9月発売の「十ロ万(とろまん)」は熟成したうま味とコクが深まる秋の気配と調和する。

 「個性が光る酒を造り続けたい」。星さんの言葉の端々ににじむ情熱が、山あいの蔵のさらなる成長を予感させた。



花泉酒造

 もち米四段仕込み採用
 創業は1920(大正9)年。冬場は雪深く酒が届かなかった南会津町南郷地域の有志が「自分たちが飲む酒は自分たちで」という思いから酒造りを始めた。仕込み水は林野庁の「水源の森100選」に選ばれている同地域の高清水自然公園の清水を使用。全銘柄の仕込み作業では、通常の工程に一手間加え、もち米を使う「もち米四段仕込み」を採用しており、優しい甘さと芳醇(ほうじゅん)な味わいが生まれる。花泉酒造(電話)0241・73・2029

花泉酒造