「就農」小沢さん...酒造りの世界へ 古殿・豊国酒造の門たたく

  このエントリーをはてなブックマークに追加 
矢内さん(左)の下で日本酒造りに取り組む小沢さん。一から仕込み作業を学んでいる

 静かな冬の蔵に白い蒸気が立ち上る中、熱気にあふれる仕込み作業―。古殿町の農業小沢嘉則さん(35)は11月から地元の酒蔵「豊国酒造」で日本酒造りに参加している。今年就農したばかりで、同酒造の日本酒に使われる酒米などを生産する小沢さん。かつて農家が携わっていたとされる酒造りの世界に飛び込み、「田舎暮らしを目指す若い世代の土台づくりとなれば」と意気込む。

 小沢さんは「大好きな故郷の自然、農業を守りたい」と今夏、16年務めた石川町内の旅館を退職し、家業を継ぐため就農した。「地産地消を推進したい」と考える一方、子ども3人を育てており、仕事の少ない冬場の不安もあった。そうした中、「昔は農家が農閑期の冬に酒造りに参加していた」という話を聞き、「一から勉強させてほしい」と江戸時代から約200年続く老舗酒蔵の門をたたいた。

 酒造りに関しては素人。先輩に一から教わり、現在はコメを洗ったり、こうじ造りなどに取り組む。作業は3月末ごろまで続くが、自分で作っているコメが日本酒になっていく過程に触れ「究極の6次化。経験が求められ、チームワークが良くないとできない仕事だが、新鮮なことばかりでとにかく楽しい。晩酌でも日本酒を一滴残らず飲むようになった」と充実した日々を送る。

 小沢さんが働くことを快諾した同酒造醸造責任者で9代目蔵元矢内賢征さん(32)は「若い世代が豊国酒造での酒造りを選んでくれたことがうれしい。コメを知っている人は酒造りへの思いも込めやすく、消費者にも伝わるはず」と話す。矢内さん自身も県内外で日本酒の魅力をPRする活動を続けており、地元を盛り上げる同世代の「仲間入り」を歓迎する。

 小沢さんは本業でも新たにブドウ栽培を始めた。旅館時代の人脈を生かして栽培法を学びながら、数年後の収穫を目指す。「田舎暮らしに興味を持つ若い人が増えてほしい。地元にこだわった取り組みを継続していきたい」と前を向く。