磨き上げた『輝く一杯』 全国新酒鑑評会、福島県の金賞受賞蔵
史上初の7年連続日本一。17日に結果が発表された全国新酒鑑評会で、本県の日本酒は再び最高の評価を手にした。切磋琢磨(せっさたくま)を続けながら、よりよい日本酒造りに向け、たゆまぬ努力を続けてきた金賞受賞蔵からは安堵(あんど)とともに、喜びの声が上がった。
伝統守り「初」獲得
【寿々乃井】寿々乃井酒造店(天栄村)は、同店が把握する限り初の金賞受賞。「頑張ってきた蔵人たちの努力が認められた」。鈴木丈介会長(82)と義理の娘で取締役の理奈さん(50)は顔をほころばせた。
創業200年余り。ここ5年ほど、全国への挑戦を続けてきた。「奇をてらわず、常に同じ物を同じように造れば必ず受賞できる」。伝統の淡麗辛口の味わいを守り、その品質を高めてきた。
「コメ、水、技術、環境と何拍子もそろわないと良い物はできない」と鈴木会長。受賞酒は酒米と裏山から湧き出る水、豊かな自然、そして蔵人の高い技術の"結晶"だ。「おごらず気を引き締めて、常連を目指す」と理奈さん。鈴木会長は「ついもう一杯いきたくなるような酒をこれからも造りたい」と意欲を見せる。
「絶えず勉強」
【奥の松】「香り高く、味に膨らみがあり、軽快でバランスの良い酒。目標通りに、しっかりできた」と東日本酒造協業組合(奥の松酒造、二本松市)の杜氏(とうじ)殿川慶一さん(69)は素直に喜んだ。
毎年違うコメの性質を的確に把握、吸水時間など各工程をきめ細かく管理しながら仕込むという取り組みが、この21年で20度目の金賞受賞という快挙を実現した。
「重圧はあまり感じない。誰からも喜ばれ、感動してもらえるような酒を造りたいという思いが全て。結果、受賞となればうれしいこと」と謙虚な姿勢を崩さない。
今回の出品酒がそろう製造技術研究会にも社員らと参加する。「良い酒が分からなければ、良い酒は造れない。絶えず勉強です」。探求心が衰えることはない。
原料処理を徹底
【開当男山】7年ぶりの金賞受賞となった開当男山酒造(南会津町)では、蔵人たちが喜びに沸いた。
「ほっとした」。同酒造蔵元の渡部謙一さん(53)は「結果の見えない酒造り。試行錯誤を重ね続けた蔵人たちの気持ちが金賞へ導いた」と届いた吉報に安堵(あんど)の表情を浮かべた。
同酒造製造部長の湯田善吉さん(57)が目指すのは「飲み飽きない柔らかい酒」。使用するコメの特徴をつかみ、温度管理や麹(こうじ)作りなど原料処理を徹底することで自慢の逸品に仕上げた。
渡部さんは「(出品した)南会津町の3蔵全てが金賞を獲得した。技術の高い福島、そして南会津の酒をこれからも発信していく」と今後を見据えた。
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