【食物語・ソースカツ丼(下)】 丼に凝縮「地産地消」 調和生み出す

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カツにソースだれを絡め、千切りキャベツを敷いた丼に盛り付ける風間さん。肉はボリューム感が人気=会津若松市・いさみ

 会津若松市の食堂「いさみ」は、手打ちラーメンが看板の老舗だ。だが、訪れた日は、ソースカツ丼の注文がやけに多かった。

 「それは、たまたま。満開の桜目当てに観光で来たお客さんが多いのかな」と2代目店主、風間千佶(せんきち)さん(74)がうれしそうに言う。

 風間さんは会津若松飲食業組合の組合長を務め、伝統会津ソースカツ丼の会の会員でもある。ただソースカツ丼を出すようになったのは、ご当地グルメの盛り上げ機運が高まった十数年前。「ラーメン中心の店だから、最初は正直抵抗があった。忙しいときにソースカツ丼を注文されると、てんてこ舞いだからね」と笑う。

 そう、看板メニューではないとは言っても、手間暇を惜しまない。注文が来れば、その都度、出す分だけ、風間さんが豚肉を切りカツを揚げ、妻春子さん(72)が包丁でキャベツを刻む。

 丼のふたを開けると、厚切りのカツ。少々ごついが、くどくない。カツの下の千切りキャベツとご飯のさっぱり感が理由だろう。丼内の熱で、しんなりしたキャベツとソースの染みたご飯が、調和を生み出している。

 ◆雪下キャベツ

 千切りキャベツは、会津のソースカツ丼の魅力の一つだ。

 風間さんによると、市内の多くの飲食店は、市場に出回る時期、会津産のキャベツを使う。

 なにしろ会津盆地は水に恵まれ、豊かな農地が広がる。昔から地場の農産物が地域内を流通し、キャベツに限らず、地縁、血縁のある農家などから直接、コメや野菜を仕入れる飲食店は多い。地産地消が浸透している。

 もちろん、トンカツと千切りキャベツは全国的に明治時代からの名コンビ。ほかにもキャベツをカツ丼に使う地域はある。しかし、会津のキャベツには物語がある。

 会津若松市農政課によると、会津で多いのが「雪下キャベツ」。盆明けの時期に種をまき、秋から冬にかけ育てる。育ったキャベツは、雪の下で出荷を待つうち甘みを増すのだという。

 同課の担当者は「会津の農業はコメが主力。野菜作りはキャベツ、白菜の露地栽培など、稲作と作業時期が重ならないものになる」と、農家が背負った制約を説明しながらも「それが冬場の収入源になり、甘みをもたらす」と話す。

 ◆丼に広がる夢

 伝統会津ソースカツ丼の会の発足から12年。この間、ソースカツ丼は、肉やキャベツなど食材の吟味、地産地消がいっそう進み、進化したように見える。

 同会の中島重治会長(65)は「かつて会津でソースカツ丼は、当たり前すぎて名物としては誰も見向きもしなかった。カツにキャベツも同じく当たり前。しかし、結局おいしいから生き残った。進化したとすれば、それも当たり前、必然なんだ」と言い「今後は器も箸も会津産を使うオール会津の展開もしたい」と夢を語る。小さな丼には、大きな夢が入っている。

食物語・ソースカツ丼(下)

《1》会津大学食堂《2》磐梯山SA(下り)レストランばんだいさん《3》ハトヤ分店《4》万世楼飯店《5》とんかつ番番《6》なかじま《7》いさみ《8》えびや《9》味処桐《10》日新町本店ハトヤ食堂《11》白孔雀食堂《12》いとう食堂(若松)《13》寿・治左エ門《14》城前ハトヤ食堂《15》本丸茶屋《16》鶴ケ城会館お食事処二の丸《17》とん亭《18》きたみ《19》いとう食堂(美里)=伝統会津ソースカツ丼の会の会員店など

食物語・ソースカツ丼(下)

食物語・ソースカツ丼(下)

(写真・上)注文を受けてから人数分刻まれるキャベツの千切り。丼に盛られふたをかぶせることで、ご飯の湯気と揚げたてのカツの熱気でキャベツがほどよく蒸される(写真・下)ソースカツ丼に輪切りのレモンとパセリが彩りを添えるのが「いさみ流」

 ≫≫≫ ひとくち豆知識 ≪≪≪

 【肉の進化】伝統会津ソースカツ丼の会によると近年、加盟店が使用する豚肉も「進化」。県畜産試験場が開発した「うつくしまエゴマ豚」を中心に県産、国内産のブランド豚を使うなど、個性を出す店が増えている。

 【コンビニのソースカツ丼】会津のソースカツ丼は、コンビニでも人気のメニューだ。大手コンビニチェーンのセブン―イレブンは、昨年9月から、チルド弁当の県内限定メニューとして、会津のソースカツ丼を発売した。セブン&アイ・ホールディングスによると、地元で親しまれているご当地グルメを専門店に行けない人にも味わってもらい、地域活性化にもつながればと企画したという。売れ行きも上々で、現在、東北全体での販売も検討されている。