【食物語・会津のラーメン(上)】 -喜多方編- 黄金色の深い味わい

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しょうゆ味のスープとちぢれ麺が特徴の喜多方ラーメン。若菜さんはあっさり味に仕上げる=喜多方市・赤れんが

 スープが先か、それとも麺が先か。まずはれんげで黄金色の澄みきったスープをすくい一口。体に染み込むような深い味わいが広がる。そしてスープとほどよくからまった麺をズズッとすする。博多や札幌などと並ぶラーメンの街、喜多方市で評判の一杯を味わった。

 しょうゆ味のスープと水分を多く含んだ多加水ちぢれ麺を使うのが喜多方ラーメンの流儀だ。市内の44店舗が加盟する「蔵のまち喜多方老麺会」理事長の若菜紀子さん(49)によると、昔はラーメンと言わず、中華そばと呼ぶ人が多かった。中国から移り住んだ「源来軒」の創業者、故藩欽星(ばんきんせい)が大正から昭和にかけ屋台を引いて街中を売り歩いたのが喜多方ラーメンの起源とされ、市内の食堂が、この中華そばを提供するようになり広まった。

 ◆木久扇さん紹介

 喜多方のラーメンが知られるようになったのは昭和50年代。当時の喜多方の観光の売りと言えば蔵だったが、蔵を見せるだけでは観光客の滞在時間は伸びないと、地元の関係者は悩んでいた。1983(昭和58)年に、当時の市の観光担当者が旅行雑誌「るるぶ」の中で喜多方のラーメンについて書いたところ、問い合わせが相次いだ。落語家林家木久扇さんが著書で紹介したのも大きかった。店の多さだけでなく、朝にラーメンを食べる「朝ラー」文化への驚き。大のラーメン好きが書いた本の影響は大きかったと容易に推察できる。

 まずは一杯と、若菜さんが経営する「赤れんが」ののれんをくぐった。れんが造りの建物の外観が、喜多方のキャッチフレーズにぴったりとくる。店主でもある若菜さんの「話は食べてからね」の言葉に従い一番人気の「喜多方ラーメン」(税込み650円)を注文。あっさりとしたしょうゆ味のスープと、もちもちとした食感の麺のバランスが絶妙で、食べ続けても飽きがこない。じっくりと煮込んだチャーシューは軟らかく、箸で優しくつまみ上げなければ崩れ落ちそうだ。

 ◆朝ラー文化定着

 最近は、背脂をのせたこってり味のスープを提供するなど、喜多方でもラーメンの味の幅が増えているという。「各店が試行錯誤しながら、喜多方ラーメンの枠からはみ出さずに個性を追求している」と若菜さん。スープを飲み干すと、話は朝ラーへと移った。

 諸説あるものの、若菜さんの説明ではこうだ。24時間稼働する市内の工場の従業員から、朝にラーメンを作ってほしいと言われたのが始まり。「朝、仕事を終えて帰宅する時や、出勤前にラーメンを食べたいという要望に店が応えたのではないか」と若菜さんは思いを巡らす。朝ラーは市民に定着し、喜多方を訪れる観光客の目当てにもなった。

 観光客の滞在時間を伸ばすための手段だったラーメンが、押しも押されもせぬ観光の柱へと変貌を遂げた。「私たちはラーメンを提供するだけではなく、ラーメンを食べに来る人たちに文化や自然など喜多方の良さを伝えていきたい」と若菜さん。味だけでなく、店主の人柄も喜多方ラーメンの魅力の一つのようだ。

会津のラーメン

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食物語・会津のラーメン

(写真)赤れんがで一番人気の「喜多方ラーメン」(税込み650円)。食べ続けても飽きがこない

 ≫≫≫ ひとくち豆知識 ≪≪≪

 【神社&ミュージアム】喜多方市の「喜多方ラーメン神社&ラーメンミュージアム」は2014(平成26)年7月に完成したラーメンの街、喜多方を代表する観光施設。会津喜多方商工会議所が運営する。建物の中に神社とミュージアムがあり、神社には丼のご神体と、割り箸でできた鳥居のモニュメントが設置されている。ミュージアムには喜多方ラーメンに関する文献などが展示され、市内のラーメン店約90店舗を写真で紹介している。記念撮影用の巨大な丼もあり、丼に入ることも可能。営業時間は午前10時~午後4時(11月~3月は同3時)。入場無料で毎週木曜日休館。問い合わせは同商議所(電話0241・24・3131)へ。

 【蔵のまち喜多方老麺会】蔵のまち喜多方老麺会は喜多方ラーメンの味の継承とラーメンを通した地域振興を目的に1987(昭和62)年に発足した。加盟するのは喜多方市内の44店舗で、「喜多方老麺会」と書かれた黒ののぼりを掲げている。同市で毎年開かれるイベント「全国ラーメンフェスタ」に出店しているほか、市などと連携して各地で行われる喜多方観光のPR活動などで、その味を提供している。若菜紀子さんは7代目の理事長で女性としては2人目。