【食物語・会津の馬肉(上)】 『健康志向』馬刺し人気 需要を伸ばす

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徹底した衛生管理のもとで加工処理される馬肉=会津美里町・会津畜産馬肉加工センター

 語呂合わせで8月29日は「馬肉の日」。馬肉料理を食べる文化がある会津や山形県長井市などでは馬食を広めようと、イベントを行う店もある。馬肉は「桜肉」とも呼ばれ、近年は健康志向の高まりもあって需要を伸ばしている。会津は熊本県などと並び馬肉の生産、消費が盛んだが、会津で馬肉が食べられるようになったのは約150年前。会津藩が悲劇に見舞われた戊辰戦争のさなかとされる。

 歴史家石田明夫さん(会津若松市)は「会津戊辰戦争」(平石弁蔵著)の中で「1868(慶応4)年8月、各方面から傷病者が運ばれてくるので、幕府の医者が蘭法治療を施した。このとき、牛馬をと殺して患者に与えたのが、会津地方における肉食の始まり」と記されていると紹介。また「籠城戦の城内では、体力の早期回復が目的で肉が食べられていた」と当時の過酷な戦況が伝えられているとしている。

 ◆続く値上がり

 牛肉や豚肉に比べ、馬肉は脂質が少なく栄養価が高いとされ、長らく会津の食卓を彩ってきた。そんな会津の馬肉だが、供給が需要に追い付かず、熊本県に次ぐ生産量を誇りながらも、モンゴル産の輸入に踏み切る寸前までいったのがつい最近のことだ。

 国産馬の肥育と、馬肉の加工卸売りを手掛ける会津畜産(会津若松市)によると、馬肉が注目されるようになったのは、皮肉にも5年前に起きた焼き肉店での食中毒事件。生食の規制で消費者が馬肉に移り、健康志向の高まりを受けた女性ファンも増えたことで人気を伸ばしてきた。

 10年ほど前、100グラムで500~600円だった「馬刺し」の価格は上がり続け、現在は千~1200円ほど。同社の宮森大典専務(39)は「この5年間で6、7回は取引先に値上げをお願いしている」と打ち明ける。そんな中、対策として持ち上がったのが先ほどのモンゴルからの輸入。「安全が第一」と宮森専務はモンゴルの加工施設を視察して「衛生面は問題ない」との結論に達し、輸入の検討を続けている。

 熊本県の販売業者の中にはカナダから輸入している業者もあるが、カナダからでは店頭価格が倍近くになるのが難点。「価格の高騰で一番怖いのは馬肉離れ」と宮森専務。会津で馬刺しが食べられない事態になっては悲しむファンが多いはずと考える。馬肉人気で会津産が転機を迎えているのは確かなようだ。

 ◆感じる『馬力』

 会津産を食べたくなり、会津若松市東栄町にある馬肉専門店「鶴我会津本店」(松島寿子店長)ののれんをくぐった。早速、馬刺しを注文すると、氷の上に盛られて出てきた。厚めに切られた赤身が中央にどんと座り存在感を発揮。白いタテガミ、あずき色のレバーが添えられている。赤身は箸でほぐせる軟らかさ。辛子みそを溶いたしょうゆにつけて口に運ぶと、特有の風味が広がり、次の一片へと箸が進む。そぼろ丼も注文。ほっとする気分にさせてくれる味わいだ。馬肉本来のうまみを大切にするメニューがうれしい。見た目にもほれぼれとしながら文句なしのおいしさに満足した。これぞ会津産との"馬力"を感じた。

(写真・上)鶴我会津本店の店頭に置かれた「8月29日は馬肉の日」看板(写真・下)会津で肥育された馬肉の「桜三品盛り」(税別1600円)。手前左からタテガミ、赤身、レバー=会津若松市・鶴我会津本店

 ≫≫≫ ひとくち豆知識 ≪≪≪

 【「東の会津」全国にPR】 日本馬事協会(東京都)によると、馬肉の生産量は本県をはじめ熊本、福岡、青森、岐阜各県で国内の約8割を占める。全国2位の県産馬肉のほとんどが会津産で「西の熊本、東の会津」とも呼ばれる。馬肉を全国に売り込もうと、会津地方の生産、流通、販売業者などでつくる団体「あいづ さくらプロジェクト」が2010(平成22)年に設立。桜肉を食べたり、購入できる店のほか、馬肉料理の「さくらレシピ」を記したパンフレット「さくらめぐり」=写真=を発行、馬肉の魅力を広めている。レシピは同団体の公式サイトでも公開している。

 【低カロリーで高タンパク】 「あいづ さくらプロジェクト」によると、馬肉は牛肉や豚肉に比べ低カロリー、高タンパクで、ビタミンEやビタミンB、グリコーゲン、鉄分などを多く含むとされる。「美容と健康に良い」などと評判を呼び、注目の食材となった。脂質がほとんどないのも特徴で、モモ、ロース、ヒレ、ハツなど部位によって焼き肉やしゃぶしゃぶ、ユッケなど、それぞれの味を楽しめる。