【食物語・福島の円盤餃子(下)】 作りたての味で勝負 知名度が全国区に

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カウンターでミックス餃子を作る秋葉さん。バットの上に小ぶりで食べやすい大きさの餃子が並ぶ=福島市・変わり餃子 こはる

 「福島で何を食べればいい。福島には名物がない」。酒のつまみとして長年サラリーマンに愛されてきた福島市の円盤餃子(ギョーザ)が、全国区のご当地グルメへと変貌を遂げるきっかけとなった言葉だ。「『それなら餃子を名物にしよう』との機運が高まった」と、ふくしま餃子の会の高橋豊会長(62)=餃子の店 山女(やまめ)店主=は振り返る。

 流れをつくったのは福島市商店街連合会青年部。餃子の専門店に呼び掛け、2000(平成12)年に無料試食会を街中で開いた。評判を呼び、3年目には広場を囲む3重の列ができた。手ごたえを感じた高橋会長らは03年に「ふくしま餃子の会」を結成。イベントへの出店や実演販売など、全国に向けたPR活動を展開した。12年には全国のご当地餃子が集結した「餃子万博inふくしま」を同市で成功させた。円盤餃子の知名度は全国区となり、週末には県外からの客の姿が目立つようになった。

 ◆『創作魂』火が付く

 ふくしま餃子の会の加盟店は少数精鋭の15店舗。冷凍餃子は使わず、作りたてで勝負する。各店が個性を打ち出し、食べ比べも楽しめる。記者が味わった中で最もユニークと感じたのが「変わり餃子 こはる」のミックス餃子。キャベツがメインの「通常」に加え、エビ入り、大葉入り、カレー味、皮にヨモギを練り込んだよもぎの計5種類。4個ずつ計20個で1400円(税別)だ。女将(おかみ)の秋葉陽子さん(76)は「特に評判がいいのは大葉とカレー。県外から来たお客さんにはミックス餃子を薦めている」と話す。

 店は1986年創業で30周年を迎えた。餃子好きがこうじて店を構えたという秋葉さんが最初に試したのが大葉入り餃子。オープンから3年目のことだった。「餃子激戦区の福島では変わったことでもやらないと生き残れない」。刻んだ大葉をあんに混ぜたりと試作を繰り返したものの、せっかくの大葉の味が消えてしまうのが難点だった。試行錯誤の末、皮とあんの間に大葉を挟むことを発案。客に出したところ評判が良かった。秋葉さんの「創作魂」に火が付き、変わり餃子のメニューは増え続けた。ミックス以外にもキムチ餃子や冬季限定のユズ餃子、要予約の特大エビ餃子がある。

 ミックス餃子を注文すると、秋葉さんはあんを包むところから始めた。「お客さんを長い時間待たせることになるが、おいしい餃子を食べてもらいたい。作り置きは絶対にしない」。味が異なる5種類に飽きることなく箸が進む。鮮やかな緑色をしたよもぎ餃子以外は見た目で区別がつかない。エビかと思って食べるとカレー味だったのは軽い衝撃だ。「出した時に説明をするが、食べるうちに分からなくなる。口に入れた時の驚きも楽しんでほしい」と秋葉さんは笑った。

 ◆番組紹介が追い風

 ここにきて円盤餃子の勢いが増している。4月に全国放送されたテレビ番組「秘密のケンミンSHOW」で円盤餃子が取り上げられた影響が大きい。「番組で『日本五大餃子』と紹介された。これまで頑張ってきたかいがあったと感じた。『福島といえば餃子』と言われるようにしていきたい」と高橋会長は力を込める。宇都宮や浜松と並ぶ「餃子の街」と呼ばれるまで、あと一歩だ。

食物語・福島の円盤餃子(下)

食物語・福島の円盤餃子(下)

(写真・上)ミックス餃子の大葉入りは小ぶりな皮に大葉をのせてあんを包み込む(写真・下)焼き上がったミックス餃子。大葉とカレーの評判がいい

 ≫≫≫ ひとくち豆知識 ≪≪≪

 【イベントには「大鍋」が登場】ふくしま餃子(ギョーザ)の会(福島市)は餃子の歴史を掘り起こしながら無料試食会や料理教室の開催、実演販売などに取り組み、中心市街地の活性化につなげている。全国規模のイベント会場では迫力の「大鍋餃子」を披露する。直径1.2メートルの特製鉄鍋で約700個の餃子を一気に焼き上げて販売。青森市で今年6月に開かれた「東北六魂祭(ろっこんさい)」でも大鍋餃子を披露し、全国から訪れた観光客に福島の餃子の魅力を伝えた。

 【G10サミットで情報交換】各地で餃子(ギョーザ)をPRしている団体が集った「全国餃子サミット」が2010(平成22)年、浜松市で発足した。宇都宮市や北九州市などの10団体が加盟、ふくしま餃子の会も名を連ねる。餃子の頭文字を取り、通称は「G10」。今年は宇都宮市で会議が開かれ、会議後の「全国餃子祭り」には全国の餃子好き22万人が押し寄せた。ふくしま餃子の会の高橋豊会長は「情報交換をしながら各地域がともに発展していきたい」と話す。