【食物語・会津地鶏】 手間暇かけて上質に 唐揚げや焼き鳥など幅広く

 
羽の模様が美しい会津地鶏。温度管理された鶏舎で地鶏は自由に動き回ることができる=三島町・会津地鶏みしまや

 今年も残り3週間。来年は酉(とり)年ということもあり、干支(えと)にあやかろうと会津地鶏のルーツを求め、三島町を訪ねた。

 プリプリとした食感にジューシーな味わいで、唐揚げや焼き鳥など幅広く料理に使われる会津地鶏。町で養鶏を営む会津地鶏みしまやの社長小平和広さん(51)においしさの秘密を聞くと、「手間暇をかけるからおいしく育つんです」と、会津人らしい実直な答えが返ってきた。

 ◆一時は絶滅寸前

 会津養鶏協会によると、会津地鶏の起源は定かではないものの、その長い尾羽が江戸時代より前から伝わる郷土芸能「会津彼岸獅子」の獅子の頭に使われているため、500年以上の歴史があるとされる。見た目の美しさから、平家の落人が会津に持ち込んだとの言い伝えもある。

 会津のみに生息する純粋種だが、体が小さく飼育する人も少なかったため、一時は絶滅寸前まで追い込まれた。そこで、県の養鶏試験場が1987(昭和62)年に保護、繁殖に乗り出した。

 純粋種を保護する一方、肉質や産卵能力を高めるため別種の「ロードアイランドレッド」などとの交配が行われた。現在、食肉用に広く利用されている「会津地鶏」は、この交配で誕生した。

 ◆震災前を上回る

 三島町の山あいに並ぶ、みしまやの鶏舎。小平さんが語る「手間暇」の答えが、この建物の中にある。温度管理された室内では、ひなの段階から日齢別に分けられた地鶏が飼育されていた。「普通の鶏とは育て方がまるで違います」と小平さん。会津地鶏の最大の特徴は飼育日数で、一般的なブロイラーの約2倍となる115~140日をかけて育てられる。自由に動き回れる「平飼い」のため、身が引き締まり、歯ごたえと肉のうま味のバランスが整うという。

 出荷先は県内と関東が中心。東京都内には、店主が全国の地鶏を食べ比べた上で会津地鶏を選んだ専門店もある。みしまやは震災と原発事故の風評被害で出荷がストップするなど、一時売り上げが落ち込んだが、質の高い地鶏を提供し続けたことで取引が戻り、現在は震災前を上回る売り上げを記録している。小平さんは「会津地鶏を一層PRしていきたい」と力を込める。

 ◆味付けは塩のみ

 三島町では、食堂や道の駅などで会津地鶏を使った料理を楽しめる。町生活工芸館隣の食事処「ログハウスどんぐり」を訪れ、看板メニューの「会津地鶏もも肉塩焼定食」(税込み1200円)を注文した。

 待つこと約10分。テーブルに並んだのは名前の通り塩だけで味付けされたシンプルな料理。しかし、一口食べただけで、余計な味付けの必要がないことが分かった。かみしめると肉汁があふれ、鶏のうま味が口いっぱいに広がる。肉の弾力に、しゃきしゃきとした白髪ネギの歯ごたえが加わり、箸が止まらない。そんな様子を見て、店主の海老名健さん(66)が「食べてて飽きがこないでしょう」とひと言。胸の内を見透かされたのは悔しいが、「また食べにこよう」と思わざるを得ない味だった。

食物語・会津地鶏

食物語・会津地鶏

(写真・上)会津地鶏のもも肉を焼き上げる海老名さん=三島町・ログハウスどんぐり(写真・下)素材の味が生きた「会津地鶏もも肉塩焼定食」(中央)とジューシーな唐揚げ

 ≫≫≫ ひとくち豆知識 ≪≪≪

 【人気と知名度は全国区】会津地鶏のPRに向けて、会津養鶏協会は県内外で情報を発信している。11月には会津若松市で「会津地鶏まつり」を初めて開いた。会津地鶏のひなと触れ合うコーナーを設けたほか、焼き鳥や唐揚げ丼、地鶏の丸焼きなどを提供し、大勢の来場者でにぎわった。全国各地で毎年開催されている焼き鳥の祭典「全国やきとリンピック」でも会津地鶏は「常連」。人気と知名度は全国区だ。

 【卵も高級食材として人気】会津地鶏の生産は会津若松市や三島町、会津坂下町など会津が中心だが、会津以外でも郡山市や浅川町で飼育されている。会津地鶏は肉用としての注目度が高いだけでなく、卵も高級食材として人気だ。会津養鶏協会によると、通常の鶏の半分となる2日に1回しか卵を産まないため、濃厚でコクがある卵になるという。だし巻き卵や卵雑炊、卵かけご飯など、さまざまな料理に利用され、高い評価を得ている。