陰性でも毎年の検診
重要
前回、大腸がんは初期には自覚症状がないこと、早期発見により、侵襲(しんしゅう)が少ない内視鏡治療が可能となり、その根治性も100%近くであることを説明しました。今回は、大腸がん検診について簡単に説明したいと思います。
【便潜血検査とは】大腸がん検診では便潜血検査(検便)が用いられます。内視鏡検査よりも診断精度は劣りますが、安全・簡単・安価で一度に多くの検査が実施可能など検診方法として非常にすぐれた特徴があります。
大腸がんは必ずしも毎日出血があるとは限らないので2日間の検体を用います。ヒトの血液にのみ反応するために食事や内服薬を制限する必要がありません。注意すべき点は、本検査はあくまでも拾い上げ診断であり、検査で陰性であってもがんを否定できないことです。陰性でも毎年連続して検査を受けることが重要です。本検査で陽性の場合は、全大腸内視鏡検査等による精密検査が必要です(上述の理由で、便潜血陽性と判定された方が、確認のため再度便潜血検査を受けることは意味がありません)。
【便潜血検査の評価】さまざまながん検診が施行されていますが、検診が有効であるためには、検査の簡便性や安全性、発見による治療効果、経済性など総合的にみた利益性が求められます。大腸がん検診はどうでしょうか。
大腸がんが多いアメリカでは以前から本検査の有効性が報告されていましたが、日本でも、本検査を毎年受診した場合には33%、2年に1度受診した場合でも13〜21%大腸がん死亡率が減少するとの報告があり、また、毎年受診することによって、大腸がん死亡が60%減るとの報告もされています。
以上のように本検査による大腸がん検診は、ほかのがん検診と比較しても、著しく有効な検診と評価されています。
(県医師会員・いわき市)
=次回掲載7月3日
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