乳幼児、青壮年期に好発
陰嚢(いんのう)が腫れる病気には陰嚢水腫(水がたまる)、精巣炎・精巣上体炎(炎症)、鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)などがありますが、精巣腫瘍(しゅよう)は悪性の疾患なので要注意です。
精巣腫瘍は精巣に発生するがんで、乳幼児期と15〜45歳の青壮年期に好発し、頻度は人口10万人に1〜2人といわれています。症状として、精巣の無痛性腫脹(しゅちょう)を訴え来院する方がほとんどですが、腹部のしこり(リンパ節転移)や胸部エックス線検査で肺の異常な影(肺転移)を指摘され来院する方もいます。
検査は腫瘍マーカー(血液検査で腫瘍が産生する物質を調べます)、超音波検査、CTスキャン、MRI検査などで腫瘍の大きさ、広がり、転移の有無を調べます。
治療は、まず確定診断を兼ね精巣を摘出し、顕微鏡で組織型(セミノーマ、非セミノーマに大別されます)、がん細胞の広がりを確認します。転移の有無、がん細胞の広がりにより手術後の治療法が決まります。がん細胞が精巣内にとどまり、転移がない場合には腫瘍マーカー、エックス線検査を定期的に行いながら経過を診ることもありますが、転移がある場合には抗がん剤による化学療法または放射線治療を行います。
精巣腫瘍はほかのがんに比べ化学療法・放射線治療によく反応し、精巣腫瘍全体の5年生存率は80%程度といわれています。転移がない場合または腹部リンパ節に転移があっても5センチ未満の場合の5年生存率はほぼ100%ですが、転移が広範囲にある場合は50%程度となってしまいます。セミノーマ、非セミノーマの5年生存率はそれぞれ95%、65%程度で、非セミノーマは予後不良です(放射線療法が有効でない)。
ほかのがんと同様に早期発見・早期治療が大切です。入浴の時にでもよく触れてみてください。異常を認めた場合は、恥ずかしいと思われるかもしれませんが、なるべく早く泌尿器科を受診することをお勧めします。
(県医師会員・会津若松市)
=次回掲載5月21日
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