【健康長寿・現実(1)】高血圧「沈黙の殺人者」 薬服用中断で脳出血

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二本松脳卒中友の会が開いた教室で、輪を目掛けてフライングディスクを投げる男性。「普通のスポーツはできないので、こうして体を動かせるのは楽しい」と話す=6月24日、二本松市安達体育館

 県民の健康への懸念が高まっている。心筋梗塞による死亡率は全国ワーストワンで、高血圧や肥満の指標も最低クラスだ。震災と原発事故以降、男女とも健康寿命の悪化が目立つ。福島民友新聞社は、県民の命と健康を守るためのキャンペーンを展開する。連載第1部では、県民を取り巻く厳しい現状をリポートする。

 県民の死因上位の背景に

 「あれっ?」。突然お湯を浴びせられたような衝撃が、左半身に走った。

 2014(平成26)年10月、福島市の体育館。友人らと共に訪れていた二本松市の男性(57)が、準備運動で背中を反らしたちょうどその時だった。

 トイレで顔を洗うが、違和感が消えない。「左足のスリッパが脱げてるぞ」。友人に指摘されて初めて気付いた。

 ろれつも回らなくなってきた。友人が呼んだ救急車に乗り込み、救急隊員の質問に答えているうち、記憶が途切れた。気付いた時、福島市の病院の集中治療室(ICU)にいた。

 脳出血だった。左半身がまひしていた。「友達と一緒にいなかったら、どうなっていたか」

 リハビリが始まり、会社は休職することになった。

 脳出血を起こす前、男性は運動するのが好きだった。長い間、健康には不安なく過ごしてきた。ただ、食事はしょっぱいもの、辛いものを好んだ。40代半ばまでは、たばこも吸った。

 50歳近くになって、転機が訪れた。医者から「高血圧ですね」と診断された。収縮期血圧は、高い時で「180」程度になった。
 血圧を下げる薬は「始めるとやめられなくなるよ」と聞いていた。

 「できれば飲みたくないなあ」

 処方された薬を1週間飲んだら、収縮期血圧が「130」程度に下がって安定した。「これなら大丈夫かな」。そう思い、薬を飲むのをやめた。

 しかしその後、再び血圧が上昇していることには気付いていた。

 軟らかでしなやかな血管は、高い圧に長くさらされることで硬くなり、破れたり詰まったりしやすくなる。高血圧は脳出血や脳梗塞といった脳卒中のほか、心筋梗塞、腎不全を引き起こす。

 「サイレントキラー」(沈黙の殺人者)。高血圧は症状を自覚することが難しく、気付いた時には重篤になっていることが多く、そう呼ばれる。

 厚生労働省が6月に発表した日本人の死因別死亡率に関する15年調査によると、本県の急性心筋梗塞の死亡率は男女ともワースト1位。5年前の前回調査でも同様だった。

 また、脳血管疾患、脳梗塞もワースト5~11位と悪い。介護なしで自立して生活できる「健康寿命」を延ばすためには、寝たきりにつながるこうした病気を予防する必要がある。

 「向こうの壁を目指して、なるべく体を使って投げましょう」。6月24日、二本松脳卒中友の会が二本松市で開いたスポーツ教室。スタッフの指導を受け、笑顔でフライングディスクを投げる男性の姿があった。

 左半身はだいぶ動くようになり、つえを使って移動している。

 1週間で血圧の薬をやめてしまった当時の「油断」を振り返る。「自分だけは大丈夫だろうって、思っていたんですよね」