【健康長寿・現実(2)】濃い塩分...薄い危機感 過剰摂取が寿命縮める

 
どこでも測れる自分の血圧。適切に数値を把握した上で、減塩など生活習慣の改善に取り組むことが求められる

 「これ飲み始めたら、一生飲み続けなきゃいけないんだばい? 先生」

 日本高血圧協会県支部の副支部長で、太田メディカルクリニック(須賀川市)院長の太田昌宏(56)は、高血圧の患者からそんな質問を受けることが多い。降圧薬を処方した時だ。

 「薬を飲むことへの抵抗感は根強い。しかし『痛みもない』からと放置していれば、気付いた時にはもう手遅れだ」

 高血圧の患者で治療を受けている人は半数にとどまる。薬を飲んでいる人でも、半数は目標値まで血圧を下げることができていないという。太田は、高血圧の恐怖について「将来寝たきりにつながる怖い病気だという認識が県民に広まっていない」と痛感している。

「血圧の高低を身長の高低くらいとしか受け止めないとか、『親戚中、全員が高いからいいんだ』と平気で言う人がいる」

 「サイレントキラー」(沈黙の殺人者)と呼ばれる高血圧を放置すると、血管や腎臓がダメージを受け、脳卒中や心筋梗塞、腎不全につながる。

 「血圧を下げれば下げるほど県民の健康寿命が延びるのはすでに分かっている。あとは住民や行政が真剣に取り組むかどうかだ」。太田は患者に血圧の適切なコントロールを求めると同時に、一般市民に対して「減塩」の重要性を訴える。食塩の過剰摂取は血圧上昇を引き起こす。「塩を食べ過ぎると寿命を縮めるということを、まずは知ってほしい」

 福島県民は、塩分を取り過ぎなのか。県が昨年度実施した調査によると、県民1日当たりの塩分摂取量の平均は、男性11.8グラム(国の摂取基準8グラム未満)、女性9.9グラム(同7グラム未満)で基準を大きく上回る。やはり取り過ぎだ。

 太田は、学校給食から減塩を始めるべきだと提案する。「何十年もその味で育つと、今更薄味にするのは難しい面もある。教育現場で、幼い時からの習慣付けは意義がある」

 2014(平成26)年10月に脳出血で倒れた二本松市の男性(57)は、左半身にまひが残り、現在もリハビリを続けている。病気を機に休職していたが、昨年11月に復帰。以前と同じデスクワークをこなす。だが、文章をプリントアウトした時や打ち合わせの際など、席を立つのは面倒に感じる。

 倒れる前は、しょっぱい食べ物を好み、血圧が高いことに気付いていながら、薬を飲むのを怠っていた。男性は、自分の経験を多くの人に伝えたいと思っている。「発症してから『ああすれば良かった』ではだめだ。病気にかからない人が一人でも増えてくれればいい」(文中敬称略)