【健康長寿・現実(3)】急性心筋梗塞の恐怖 突然胸に痛み、圧迫感

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 「胸が苦しい」。ある夏の日の午前6時、県北に住む70代男性は、胸に強い痛みを感じた。締め付けられるような圧迫感のある苦しさが長く続いた。

 高血圧の治療中だった男性は、血圧の薬を処方されていた近くのかかりつけ医に連絡して診てもらった。急性心筋梗塞の疑いと診断され、治療ができる福島医大に救急車で搬送された。

 担当した循環器内科学講座の中里和彦(49)は「血圧は保たれていたが、脈が遅くなる『房室ブロック』が発生していた」と話す。

 直径約2ミリの細い管(カテーテル)を足の付け根の動脈から挿入して心臓を映し出す検査をすると、右の冠動脈(心臓に栄養と酸素を送る血管)が詰まっていた。そのまま治療用のカテーテルに交換し、詰まった部分の吸引作業に入った。脈が遅くなっていたため、心臓ペースメーカーを使いながらの治療だった。

 局所麻酔なので男性に意識はある。静かに横たわっていたが、胸の苦しさと死への恐怖で冷や汗が出ていた。詰まっている間は多くの場合、声を上げることもできないほどの苦しさが続く。

 治療開始から2~3時間後、吸引を数回続けて血栓(血液の塊)が取れ、詰まっていた冠動脈の血流が再開した。治療台の上から男性が「楽になりました」と言葉を発した。

 十数年前までは、急性心筋梗塞の患者が運び込まれても、痛み止めとしてモルヒネを打つくらいしか対処法がなかった。それがカテーテル治療の誕生で、血流を再開させる緊急治療が可能となった。

 さらに治療後の仕上げとして、冠動脈ステントという金属の網で患部を広げて押さえ付ければ、再発を防ぐこともできる。

 国が発表した日本人の死因別死亡率の最新調査では、本県の急性心筋梗塞の死亡率が男女ともワースト1位だった。治療のポイントは「いかに早く血流を再開できるか」。詰まっている時間が長いほど、酸欠が進んで心臓の一部が壊死(えし)していくからだ。ただし、治療に至るまでの時間短縮には限界がある。それよりも「まずは予防することを最優先に考えたほうがいい」と中里は指摘する。

 男性はその後完治し、2週間で退院した。再発を防ぐために紹介元の医院に通い、血圧とコレステロールの値に気を付けている。

 急性心筋梗塞を引き起こす日本人の大きな要因は〈1〉高血圧〈2〉糖尿病(高血糖)〈3〉高LDLコレステロール〈4〉喫煙〈5〉男性であること―の五つ。中里は「特に男性ほど、これらの数値に日ごろから気を付けてほしい」と呼び掛ける。(文中敬称略)