【健康長寿・現実(5)】塩分過多の改善模索 男性は1日8グラム目標

 
昼食を味わう職員。職場から減塩の取り組みが始まった=白河市・白河厚生総合病院

 「おいしい。全然気にならない」。白河市の白河厚生総合病院の職員食堂では毎月17日、昼食を食べた職員からこんな言葉が聞かれるようになった。

 同病院は5月、日本高血圧学会が定める毎月17日の「減塩の日」に合わせて、職員食堂で減塩メニューの提供を始めた。

 取り組みの事務局を務めるのは福島医大などが同病院に設置した寄付講座「白河総合診療アカデミー」。事務局職員の尾股かおり(51)は「減塩を感じさせない味は好評。減塩味付けを家庭で実践する職員も多くなった」と実感する。

 今月、県が発表した昨年度の県民の栄養摂取状況調査によると、食塩摂取量の平均値は1日当たり10.8グラム(男性11.8グラム、女性9.9グラム)で、厚生労働省が示す目標値(男性8グラム未満、女性7グラム未満)を大きく上回った。

 男女とも「塩分過多」の数値は県民の健康指標の悪化を裏付けた。こうした現状を踏まえ、心疾患や脳血管疾患のリスクとなる高血圧や肥満、高脂血症などの予防に向け、県内の企業や団体が組織を挙げて生活習慣の改善に取り組むケースも見られ始めた。

 白河厚生総合病院の職員食堂での減塩メニューの提供は食堂だけでなく、病院全体で減塩を目指す取り組みの一環だ。

 当初は1日70食程度を想定していたものの、毎回100食以上の注文がある人気メニューになった。減塩メニューのメイン料理は「豚しゃぶ」や「鶏のから揚げ」など、職員に人気の肉料理が並ぶ。8月の「減塩の日」にはハンバーグを提供する予定だ。ただ、使用する塩分量は厚労省の目標値以内に収まる計2.3グラム程度。減塩でも味に物足りなさを感じないように、タレやドレッシングを工夫し塩分を抑えた。

 「食事の組み合わせやメリハリで簡単に減塩できることを知ってほしい。全国平均よりも極めて悪い数値の塩分だからこそ、減塩の効果は大きく期待できる」。減塩メニューを提唱した同病院の総合診療医で同アカデミー講師の高田俊彦(37)は取り組みの意義を語る。

 福島商工会議所は2015(平成27)年度から「健康経営」を重点事業に据えた。定期的に健康経営セミナーを開き、従業員の健康を重要な経営資源と捉え、健康増進に積極的に取り組む必要性を会員企業に伝えている。同会議所も健康事業所の宣言に参加し、週に一度飲酒をやめる「休肝日設定」など生活習慣の改善を職員に呼び掛けている。

 専務理事の石井浩(61)は「従業員の心身が健康だと企業の収益率が高いというデータがある。それを経営者がどう実感するかだ」と話す。(文中敬称略)