【健康長寿・減塩(3)】「薄味」楽しく広める 先進地・広島の工夫

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減塩サミットは広島カープが協力し、マスコットの使用や選手直筆の題字で会場を盛り上げた=2014年5月、広島市・旧広島市民球場跡地

 「何を食べても塩辛いな。これでは素材の味が分からないじゃないか」

 昨年4月に着任した福島医大循環器内科学講座の石田隆史教授(56)は、外食やスーパーの総菜を食べるたび、そう感じる。それでも単身赴任なので、外食か総菜を選ぶしかない。

 県の昨年度の調査では、県民1日当たりの塩分摂取量は男性11.8グラム(国の摂取基準8グラム未満)、女性9.9グラム(同7グラム未満)で、基準を大きく上回っている。

 福島医大に着任するまで、広島大学病院など広島県内で勤務していた。広島は減塩運動の先進地として知られる。日本高血圧学会で減塩委員会委員を務める石田教授は、広島に減塩を根付かせた立役者の一人だ。石田教授らが中心になった医師たちが最初に考えたのは、減塩を「楽しく広める」ことだった。

 2014(平成26)年、広島での学会フォーラムに合わせ、市民向けのイベント「減塩サミット」を企画する。場所は旧広島市民球場跡地。実行委員会事務局長の石田教授は広島カープに協力を仰いだ。イメージキャラクターに球団マスコット「カープ坊や」が塩をかっ飛ばしている姿を使い、題字は木村昇吾選手(現西武)が書いた。

 会場は、カレーやお好み焼きなど減塩メニューの食べ歩きができるグルメストリート、しょうゆやみそ汁など減塩食品の即売会、脳梗塞から復帰した広島市出身の歌手・西城秀樹さんのトークショーやクッキングショーも開いて祭りの雰囲気を前面に打ち出した。医療関係のイベントでは異例のにぎわいで、2日間の集客数は1万6000人を超えた。

 この時のイメージキャラクターは、おいしい減塩メニューを提供する飲食店の新たな認定ステッカーにも使用される。「カープ坊やなら広島県人であれば必ず手に入れたくなる。当初のステッカーより反響が大きく、メニュー作りに励む飲食店がさらに増えた」

 市民の意識の変化は、教育現場にも広がる。呉市の小学校の給食では1食当たりの塩分量を平均3.1グラムから2.3グラムまで下げるために、毎年0.2グラムずつ下げていく目標を立てた。子どもの頃から薄味を舌で覚えさせることが目的だが、思わぬ効果も生まれた。「うちの料理はしょっぱい」と家庭内で減塩運動の先頭に立ってくれる。親や祖父母も子どもの意見を無視するわけにはいかず、家庭料理の塩分量を見直すきっかけになる。

 この「少しずつ塩分を減らす」方法は「家庭でもおすすめ」と石田教授は語る。「急に減らせば外食の味に慣れたお父さん方が抵抗する。塩分は習慣性が強く、薄味に一度慣れると違和感はなくなる。気付かれないことを『しめしめ』と思って少しずつ減らし、楽しみながら進めてほしい」