【健康長寿・糖尿病(1)】被災地で高血糖増 避難中に食生活乱れ

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 11月14日は「世界糖尿病デー」。今年も世界各地で糖尿病の予防や治療を呼び掛ける運動が行われた。厚生労働省の2016年人口動態統計などによると、福島県の人口10万人当たりの糖尿病による死亡率は16.3人で全国ワースト3位だ。県民の健康寿命を延ばすためには避けて通れない「糖尿病」を巡る問題を考える。

 「うそだ」。南相馬市原町区で電気工事業を営む会社役員の男性(70)は7月に信じがたい健診結果を受け取った。

 空腹時の血糖値が正常範囲を大きく超え「267」。医師の診断の欄には「糖尿病疑い」との記載。「今まで、病気なんてしたことなかったのに...」

 慌てて糖尿病の食事療法などを学ぶ「教育入院」の手続きを取った。

 「でも今思えば、3年ぐらい前から少し高くなっていたなあ」と振り返る。

 男性は震災直後、親族のいるさいたま市などで避難生活を送った。「都会にはおいしいものがいっぱいあって、夜遅くまで開いている飲食店も多い。避難中は、結構食べたなあ」

 震災から6年8カ月。避難に伴う食生活の乱れやストレスが潜伏期間を経て顕在化し、高血糖の一因になっているとみられる。

 南相馬市立総合病院などに勤務する坪倉正治医師(35)ら研究チームが昨年、南相馬と相馬両市民の震災前後の糖尿病の発症割合を調べた結果、避難した人で震災前(08~10年の平均値)の約1.6倍、避難していない人でも約1.3倍に増えたとの論文を発表した。

 被ばく上回るリスク

 今年9月には、両市民の余命がどれだけ縮まるか(損失余命)を比較した調査で、震災後増加した糖尿病の健康リスクは、放射線被ばくによる発がんリスクの20~30倍大きいとの研究をまとめた。被ばくによる発がんによる損失余命は40~70代で0.0024年。一方、糖尿病の損失余命は同年代で0.05~0.08年と算出された。

 坪倉医師は「震災と原発事故に伴う社会変化や生活環境の変化が影響している。福島で今、医師が最も対応しなければならないのは放射線被ばくでなく、生活習慣病だ」と強調する。

 行政の目配り届かず

 現在も避難区域が残る双葉郡では、住民の健康を懸念する声はより大きい。双葉厚生病院(双葉町、休業中)の院長で、糖尿病が専門の重富秀一医師(67)は「避難区域が解除された後も仮設住宅にとどまる人のように、復興から取り残された形になっている人が一番心配」と話す。行政の目配りが届きにくく、生活習慣の乱れが改善されないケースが少なくない。

 「自分の血糖値をしっかり把握できているだろうか。実態調査を進めてほしい」と指摘する。

 教育入院を終えた「糖尿病予備軍」の男性。11月のある昼、山盛りのサラダをゆっくりとかみしめるように口に運んだ後、副菜、ご飯の順に食べた。1日1600キロカロリーに収まるよう、細かく計算して用意した食事だ。今月2日の検査で、血糖値は108まで下がった。だが油断はしない。「長い間の生活習慣が積み重なった病気。これからも長く気を付けないといけない」