【健康長寿・糖尿病(2)】隠れて進む合併症 早期治療極めて重要

 
空腹時の血糖値が126以上、食後の血糖値が200以上だと糖尿病と診断される

 県北に住む40代の高橋翔子さん(仮名)は、診断結果を冷静に受け止めることができた。太り気味の体形を自覚しており、親も糖尿病を患っている。

 診断のきっかけになったのは耳の病気だった。耳鼻科でステロイド治療を行うと副作用で血糖値が跳ね上がり、「隠れ糖尿病」であることが判明。内科での糖尿病の治療が始まった。それからは大好きだった甘い物の間食をやめ、昼休みにウオーキングをするようになるなど、食事制限と運動に熱心に取り組んで血糖値は改善。その後も数値はコントロールできていた。

 しかし数年後、急に視界に黒い影が出てきた。眼科に駆け込むと、眼底で出血が起きていた。病名は「糖尿病網膜症」。糖尿病で併発する合併症の一つだ。視野の半分が欠けるほどの大きな出血だった。

 担当医の谷牧夫たに内科・糖尿病内科クリニック院長(60)は「見つかるまでの期間が長すぎた」と話す。

 「若い頃のつけ」影響

 「治療開始後は食事制限も運動もすごく真面目にやっていたが、それ以前に状態が悪いまま長く放置されていた。高血糖の期間が長ければ長いほど、自覚されないところで合併症が進行する。合併症は血管障害が原因で、一度傷ついた血管はなかなか修復しない。若い頃のつけは、年齢を重ねると少しずつ出てくる」

 自営業の翔子さんは、定期的な健康診断を受けていなかった。無自覚で無症状の糖尿病は健診を受けなければ、ほとんど判明しない。「いかに早い時期に治療を始め、高血糖の状態を防ぐかが重要です」

 糖尿病の三大合併症は〈1〉網膜症〈2〉腎症〈3〉末梢神経障害―とされる。どの合併症を引き起こすのかは患者によって傾向が異なり、その理由はまだ明らかになっていない。翔子さんの場合は網膜症だった。

 「最近は新しい治療法がどんどん開発され、目の症状が進行しそうなら眼底出血を防ぐためのレーザー治療という方法もある。手の施しようがないという状況は少なくなっている」

 翔子さんは手術により失明を防ぐことはできたが、視野が少しだけ狭くなる障害が残ったという。失明にまで至らなかったのは、診断後は真面目に治療に取り組んだためかもしれない。

 働き盛りこそ要注意

 注意すべきなのは「治療の中断を繰り返す人」だと谷院長は警告する。「特に中年男性は仕事が忙しいためか通院が不規則になり、何カ月も治療が中断するケースが多い。働き盛りの中年男性こそ要注意です」