【健康長寿・糖尿病(3)】心筋梗塞なぜ多い メタボも発症の恐れ

 
福島市の公開講座で、血糖測定や栄養相談コーナーに集まる市民。講演した島袋教授は糖尿病予防の啓発の重要性を強調する=12日、福島市保健福祉センター

 「福島県で日本一心筋梗塞が多いのは、メタボや糖尿病が原因の可能性が高い」

 福島市医師会などが12日に開いた市民公開講座。福島医大の糖尿病内分泌代謝内科学講座の島袋充生教授(54)が、集まった大勢の市民に呼び掛けた。

 「しめじ」と「こがに」

 糖尿病が引き起こす合併症を、語呂合わせで「しめじ」と「こがに」と呼ぶ。「し」はしびれ=神経障害、「め」は目の網膜症、「じ」は腎症。「こがに」の「こ」は梗塞=心筋梗塞や脳梗塞、「が」はがん、「に」は認知症のことだ。

 生まれつきの体質ではなく、食べ過ぎや運動不足に起因する糖尿病では、特に「こがに」が問題となる。

 厚生労働省が6月に発表した、日本人の死因別の年齢調整死亡率(2015年)によると、本県の急性心筋梗塞の死亡率は都道府県でワースト1位だ。震災前の10年調査も同じだった。島袋教授は「糖尿病だけでなく(一歩手前の)『境界型』やメタボも糖尿病になっていく過程で心筋梗塞を引き起こす。糖尿病だけを問題にしていると、誤った対策になる」と警鐘を鳴らす。

 メタボほどの肥満になると、高血糖で動脈硬化が進むとともに、インスリンが効きにくくなって血液中の中性脂肪が増え、心筋梗塞が起きやすくなる。

 震災後の割合が悪化

 15年厚労省調査で、特定健診でメタボリックシンドロームに該当した県民の割合(メタボ率)は17.1%で全国ワースト3位だ。10年度以降上昇が続いており、特に震災後は全国ワースト2~4位と悪化。震災と原発事故の影響で運動量が低下したり、食生活が変化したことが一因とみられる。

 「震災で増えた肥満が今後30年の間に、心筋梗塞やがん、認知症の増加につながっていく。こうした震災の影響は今はまだ見えにくく、これから明らかになる問題だ」

 県民の健康のさらなる悪化が懸念されるが、それに伴って県内で危機感が高まっているとは言えない。

 「先生、自分は運動、食事で頑張ってみます。薬は飲みたくない」。島袋教授が、治療を勧めた県内の糖尿病患者からよく聞く言葉だ。

 本県に赴任して1年。前任地と違い、糖尿病を放置して失明寸前で救急に運ばれる患者が少なくないと感じている。

 広く啓発が必要だと訴える。「糖尿病が『こがに』につながるということを県民は知っているだろうか。運動療法も食事療法も自己流はいけない。受診による改善効果が、自分の一生を決めるということを知ってほしい」