【健康長寿・糖尿病(5)】阿波踊りで最下位脱出 対策ヒントに

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糖尿病対策としての阿波踊り体操に取り組む徳島県民ら。老若男女が県民体操として親しんでいる

 本県は2014(平成26)年度の特定健診で、糖尿病など生活習慣病の発症リスクが格段に高まるといわれるメタボリック症候群の県民の割合(メタボ率)が全国ワースト3位から2位に悪化した。原因の一つに運動不足が指摘される。県民への運動習慣の普及は喫緊の課題だが、手軽な運動から県民の健康指標が改善した事例が徳島県にある。

 「ヤットサー、ア、ヤットヤット」。徳島市の公園では早朝、ウオーキング愛好者が掛け声とともに、郷土芸能の阿波踊りを踊る。

 本場ならではの光景にも見えるが、よく見ると踊りの合間にももを高く引き上げる動きや、かかとを前に出しながら屈伸する動作が交じる。愛好者が励むのは「阿波踊り体操」だ。徳島県は県民のシンボルを取り入れた健康体操の普及を通じ、生活習慣病を予防、改善する取り組みを続ける。

 体操は06年1月、12年連続で都道府県別の糖尿病死亡率1位が続いていた徳島県が地元の大学に協力を求めて作った。

 「地方では、どこに行くにも車を利用する社会。県民の1日の歩行数も全国平均より千歩少なかった」

 糖尿病の原因を食べ過ぎと運動不足に照準を定め、体操を考案した徳島大大学院総合科学研究部の田中俊夫教授(57)は振り返る。

 場所取らず短時間で

 「最初からウオーキングでは、運動不足の人にはハードルが高い。親近感のある阿波踊りならば楽しく、次もやってみようかとなる」。手足を使い、前後左右への重心移動が多い阿波踊りの運動性に着目。ストレッチや筋力づくり、全身運動を盛り込んだ約3分半の体操にした。〈1〉短時間〈2〉場所を取らない―などの要素が県民のニーズと合致。現在では各地のケーブルテレビで毎日放映されるなど、県民の体操として定着した。

 「糖尿病にならない、合併症にならないなど成果が出るまでには10年かかる」と田中教授。徳島県は阿波踊り体操と野菜摂取量を増やす食生活の改善で、07年に糖尿病の死亡率全国ワースト1位から脱出した。しかし翌08年からは5年連続でワースト1位が続いた。再びワースト1位を抜け出したのは13年で、以後3年連続で改善傾向にある。健康指標の改善が一朝一夕にはいかないのが現実だ。

 運動習慣への仕掛け

 本県の人口10万人当たりの糖尿病死亡率は16.3人で全国ワースト3位。県は通勤など職場環境の中で歩くことを推奨する「ウオークビズ」など運動習慣の普及に向けた取り組みを始めた。ただ、県民生活に定着するまでには多くの時間が必要で、試行錯誤が続く。

 体操の制作から11年を経て、徳島県ではウオーキングイベントやマラソン大会に参加する県民が飛躍的に増加した。「体操は運動不足の生活から、運動を行う活動的な生活への橋渡し役となった。ただ、運動していない県民も多く、これからもさまざまな取り組みを仕掛けなければならない」。本県が目指すべき糖尿病対策のヒントが隠れている。=第3部糖尿病・おわり