【健康長寿・運動不足(5)】日常の中で歩こう 高血圧の解消急務

 

 「スポーツじゃなくてもスポーツ観戦でいい。観戦に行けば必ず歩くので」。福島医大健康増進センターの大平哲也センター長(53)は、健康増進のための運動について「普段の生活の中で外へ出て行って歩くような『身体活動』のレベルで構わない」と指摘する。

 全国で死亡率がワースト1位の急性心筋梗塞などを減らすためには県民の高血圧の解消が急務で、減塩など食生活の改善と運動が効果的だ。大平氏は「人によってはこれまでの食生活を変えることは簡単ではないが、運動なら日常の中でできる」と注目する。

 県民に運動を啓発しようと、県は歩数計を備えた「ふくしま健民アプリ」を作製した。「健康増進に向けてソフト面の取り組みは進んでいる。今度は、歩きたくなる環境づくりなどハード面の施策も考えていってもらえれば」と期待する。

 商業施設の活用を

 施設整備などを伴うハード面の取り組みは費用もかかり簡単ではないが、「既存の施設でできることも多い」。大平氏は2005(平成17)~06年に留学していた米ミネソタ州のことを思い出す。マイナス20度まで下がる冬の間、住民はショッピングモール内を歩いて運動していた。「福島も冬はちょっと歩きにくいところがあるので、有効だ」

 ミネソタ州で行われていた「モールウオーキング」を、イオンモール(千葉市)は全国約140店舗で実施している。天候に左右されない安全な環境で健康的な運動習慣を身に付けてもらおうと始め、このうち30以上のモールでは定期的にトレーナーによるウオーキングレッスンを実施。このほかにもイオンは「街歩きとコラボしたイベントや、ウオーキングスタンプラリーなど、モールごとにさまざまなイベントを行っている」(広報部)という。

 モール館内には、スタート地点からの距離や消費カロリーが分かるウオーキングサインの表示もある。大平氏は「歩く目安を示すちょっとした工夫があれば、店内をただ歩いていても不審がられることはない」と利点を語る。

 官民がアイデアを

 階段の上り下りも運動として有効だ。しかし県内の階段がある場所は、高い建物が多い大都市と比べれば数は少ない。この点でも大平氏は商業施設に注目する。「デパートなどの階段を、運動のためのスペースとして開放してもらうことはできないだろうか」。県民の運動不足解消に向け、官民のさまざまなアイデアが求められている。=第4部運動不足・おわり