【健康長寿・過信(2)】糖尿病...失明の恐れ 放置なら網膜症進行

 
県内の糖尿病網膜症患者の治療を担う石龍教授。「血糖コントロールが適切になされていれば、網膜症を発症することは少ない」と話す

 「目が見えにくくなって眼科を受診して初めて、糖尿病を発症していたことが分かる患者がいる。糖尿病網膜症が最も重症化するケースだ」。福島医大眼科学講座の石龍鉄樹教授(58)は、糖尿病を発症しているにもかかわらず長年放置し、眼科に来なかった患者の存在を問題視する。「早い段階なら治せるが、入院治療が必要な段階になると、視力はもう戻らないことを覚悟してもらわなければならない」

 長い期間を経て発症

 糖尿病網膜症は視力低下を引き起こし、最悪の場合失明に至る。石龍教授によると、食べ過ぎや運動不足といった生活習慣などに起因する2型糖尿病では、合併症の網膜症を発症する割合は、糖尿病発症から5年未満だと14%、15~19年経過していると57%。糖尿病になってから、長い期間を経て発症するのが網膜症だ。網膜症発症後に糖尿病になっていたことが判明するというのは、それだけ長い期間にわたり病気を放置していたことを意味する。

 「仕事が忙しかったから...」。なぜこれまで受診しなかったのかと石龍教授が尋ねると、患者からはそんな答えが返ってくるという。「まずはしっかり健診を受け、異常があれば継続的に受診してほしい」

 ただ、糖尿病と診断されたことを受け眼科を受診しても、糖尿病が初期段階の場合は異常がないことが多い。「1度受診して『なんだ大丈夫なのか』と安心してその後眼科に来なくなった患者のうちの一定数が、5~10年後に深刻化している。初期には発症しないことを理解した上で、経過観察していくことが必要だ」

 死亡率ワースト3位

 厚生労働省の2016年人口動態統計などによると、本県の人口10万人当たりの糖尿病による死亡率は16.3人で全国ワースト3位。心筋梗塞やがん、認知症にもつながる糖尿病をいかに減らすかが、健康長寿を目指す本県にとって大きな課題になっている。

 網膜症を巡っては、震災と原発事故の影響も生じた。2013年ごろ、同大では網膜症の手術件数が一時的に増加。震災前は定期的に眼科を受診していた糖尿病患者が、避難でかかりつけ医に通えなくなり、悪化させたケースが多かった。

 石龍教授は網膜症で手術が必要になるほど深刻化する前に、まだ初期段階の糖尿病患者を診ることが多い他の診療科や地域の開業医などと連携し、治療や生活習慣の改善を促す取り組みを進めたい考えだ。

 県民には、定期的、継続的な健康チェックの重要性を強調する。「病気につながる生活習慣は自分では気付きにくく、客観的に評価してもらう必要がある。自分は健康と過信していると、いつの間にか悪くなる」