【健康長寿・禁煙(5)】法改正企業対応迫る 喫煙への社員意識が鍵

 
終日禁煙実施後、喫煙所が休憩スペースに改修された損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険の本社ビル。企業の受動喫煙対策も喫緊の課題だ=東京都新宿区

 職場など多くの人が集まる建物内を原則禁煙とする改正健康増進法が2020年4月に全面施行されることを受け、企業も対応が迫られている。「社員の健康維持の推進が会社の役目。コストをかけてでも環境を段階的に整備し、社員の喫煙率を下げたい」。損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険の長尾順子人財開発部人事グループ課長(57)は禁煙の意義を強調する。

 全ての社内「終日」に

 同社は昨年8月、全国131カ所の営業拠点を含め、全ての社内占有スペースを終日禁煙とした。東京都新宿区の本社ビル内の喫煙所は休憩スペースに改修。昼休みに休憩スペースをのぞくと、女性社員らが談笑する姿があり、もはや喫煙所の面影はない。

 さらに10月からは役員と幹部社員を対象に就業時間内の喫煙を禁じた。禁煙治療費の補助や社員向け禁煙セミナーの開催、電話による禁煙カウンセリングなど、矢継ぎ早に対策を打ち出した。「数値的な効果はまだ見えない。ただ受動喫煙や3次喫煙など、たばこの悪影響を少しでも防ぎたい」と長尾課長は思いを語る。

 同社の16年度社内調査によると、社員の喫煙率は20・8%で、約3千人の社員の5人に1人が喫煙者という状況だ。同社は全社員を対象とした就業時間中の禁煙に向けた社内アンケートを実施中で、結果を今後の対策に反映させる方針。「最終的な方向は禁煙だが、社員がやらされ感を感じては意味がない。社内にさまざまな意見があるのは事実で、全面禁煙はハードルが高い」。長尾課長が指摘するハードルは、多くの企業に共通した課題だ。

 「自発性促さないと」

 県内企業もこのハードルを前に試行錯誤を重ねている。福島市瀬上町の包装資材卸売業「福一屋」は女性社員の妊娠を機に、7年ほど前から分煙対策を段階的に強化した。現在は食堂の一角に喫煙ルームを設けるなど、受動喫煙防止の取り組みを進めている。同社の安斎文江専務(57)は「社内分煙は課長級社員の話し合いで決まった。トップダウンは簡単だが、社員の自発性を促さないと成功しない」と話す。

 全国的に喫煙者を採用しない企業などが話題となる中、中小企業が大多数を占める県内では禁煙の流れに戸惑いの声もある。

 「禁煙にしてもトイレなどで隠れて吸われて火事や事故を起こしたら意味がない。しかもたばこは嗜好(しこう)品で、会社が管理できる部分には限度がある」。安斎専務の言葉もまた、ハードルの高さを浮き彫りにする。