【健康長寿・禁煙(6)】健康計画成果!喫煙率最も低い「滋賀」

 
禁煙居酒屋の「ビストロ・チッチ」の店内。「『禁煙では客が集まらないだろう』とオープン当時は身内からも反対された」と松島さん(中央)は振り返る=大津市

 喫煙率は地域差が大きい。国の2016(平成28)年調査によると、都道府県別の成人男性の喫煙率は本県が35.2%で全国6番目に高く、全国平均は29.7%。最も低いのは滋賀県で20.6%。本県との差は約15ポイント。滋賀は平均寿命が全国最長の県としても知られる。なぜ喫煙率が低いのか。

 県が主導し取り組み

 滋賀県もかつては成人男性の喫煙率が高く、2000年の調査では55.7%で全国平均を上回り、男性の肺がん死亡率も全国に比べ2割程度高かった。「喫煙対策がより重要」と捉えた県は01年、男性の喫煙率を「半減させることが望ましい」と、大きく踏み込んだ目標を掲げた健康計画をまとめた。

 「喫煙は個人の問題で、行政が規制するのは間違っている」。この禁煙目標の案に、県民から反対意見が620通寄せられたという。賛成意見はわずか15通。激しい反対の声が上がったが、県は大学や医師会、教育団体で「たばこ対策推進会議」を組織したり、「受動喫煙ゼロのお店」を公募するなど取り組みを進めた。

 小中高での教育効果

 長くたばこ対策に取り組んできた滋賀県衛生科学センターの井下英二所長(63)は、小、中学、高校の教員が現場で禁煙教育に取り組んだ効果が大きかったと考えている。約20年にわたる禁煙教育が、現在の20~30代の喫煙率の大幅な減少につながった。「50~60代にたばこをやめてもらうのは難しい一方、子どもに呼び掛ける意義は大きい。最初の1本を吸わせないことが大事だ」

 全国的な喫煙率低下の流れも相まって、滋賀の喫煙率は下がり続けた。肺がん死亡率も低下。男性の平均寿命は15年の国の調査で、長年全国1位を守り続けてきた長野を抜き、81.78歳でトップに立った。

 滋賀県庁に近い「ビストロ・チッチ」(大津市)。11年の開店時から「禁煙居酒屋」として営業を続けている。「禁煙と知って、のぞいただけで帰る客も多く、初めは苦労した」。店を夫婦で始めた松島実保さん(36)は開店当時を振り返る。「今は街に禁煙の店も増えた。禁煙は地域に浸透している」。家族と一緒にお酒を楽しむサラリーマンなどもおり、好評だという。

 井下所長は「滋賀のたばこ対策は他県より10年進んでいる。福島もこれから取り組みを始めれば成果が出るだろう」と、健康長寿を目指す本県に言葉を送った。=第6部禁煙・おわり