【ぜんそく診療最前線】新たな治療 悪さを抑える注射薬

 
生物学的製剤の皮下注射(左)と、気管支熱形成術による治療(右)

 適切な治療を行っても症状や呼吸機能がコントロールできない「ぜんそく」を難治性ぜんそくと呼びます。「ぜんそく」患者さん全体の10%程度いるとされています。この10年の間に難治性ぜんそくの患者さんに対して次に挙げる新たな治療が行えるようになり、一筋の光明が見えてきました。

 リウマチやがんの最新治療法として聞いたことがあるかもしれませんが、「生物学的製剤」と呼ばれる特定の悪さをしている物質を標的として、その働きを抑える注射薬が登場しました。生物学的製剤は高い治療効果が期待でき、かつ副作用もほとんどありません。

 もう一つの最新治療として「気管支熱形成術」という治療法が保険適用になりました。これは、空気の通り道に気管支鏡というカメラを挿入し、専用のカテーテルで気管支粘膜を60度に温めることによって気道を広げてあげる治療法です。ぜんそく発作の頻度を減らし、これまでより楽な日常生活を送ることが可能となります。

 このように、もう良くならないと半ば諦めていた難治性ぜんそく患者さんにも、有効な治療法が次々と開発されてきています。

 一方、アレルギー性鼻炎のうち、花粉によるものを花粉症といいます。日本ではスギ花粉症の患者さんが多数を占めます。アレルギー性鼻炎は日本人の約40%が罹患(りかん)しているとされ、「ぜんそく」から見たアレルギー性鼻炎の合併率は、小児で約60~70%、成人で約40~60%といわれています。鼻と気道は一続きの道であり、アレルギー性鼻炎を発症すると「ぜんそく」も一緒に悪くなることがあります。

 そろそろスギ花粉の時期になってきました。この時期に気を付けなければならないのは、原因物質からの回避であり、外出する際にマスクや眼鏡を着用すること、家に帰った時は衣類を払うこと、洗濯物の外干しを避けること、空気清浄器を使用することなどが挙げられます。

 また、薬物治療としては、「ぜんそく」の治療に加えて、抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗(きっこう)薬などのアレルギー反応を抑える薬剤の内服、もしくは、点鼻ステロイド薬や点眼抗アレルギー薬などの局所療法を行うことになります。(福島医大医学部呼吸器内科 斎藤純平医師、柴田陽光教授)