歯性上顎洞炎

 

 鼻閉感や鼻汁の症状

「走ったりすると、上の奥歯のあたりに響くような感じがある」と言って来院される方がいます。その場合、後頭部を軽くたたいて同じような感じがあれば「上顎洞炎(じょうがくどうえん)」が疑われます。上顎洞炎は、一般には「蓄膿(ちくのう)症」とも呼ばれ、鼻粘膜の炎症が上顎洞に広がることによって起こります。上顎洞(副鼻腔)は、左右鼻のすぐ横、眼窩(がんか)の下にある上顎骨内の空洞で、鼻腔とつながっています。

 また、上顎洞の底の部分は個人差はありますが、上の奥歯の根に近接しているため、上顎洞に炎症が起こると上の奥歯に違和感を覚えることがあるのです。

 逆に、上の奥歯の根が近いことで、むし歯や歯周病の炎症が上顎洞に波及する場合があり、これを「歯性上顎洞炎」と呼びます。鼻粘膜の炎症が原因の上顎洞炎は、耳鼻科領域で扱われますが、歯性上顎洞炎は、原因歯の治療も必要となってくるため、歯科口腔外科の領域で取り扱われます。歯性上顎洞炎の症状としては鼻閉感や鼻汁、偏頭痛、眼窩下部の痛みなどですが、原因歯のある片側に起こるのが特徴です。

 検査法は、レントゲン写真により上顎洞と原因歯の状態を調べます。治療法は、抗生物質の投与、原因となる歯の治療や抜歯とそれに伴う上顎洞内の洗浄、それでも治癒しない場合、手術(上顎洞根治術)となります。

 いずれにせよ、初期の段階での治療が効果的ですので、自覚症状がありましたら早めにかかりつけ歯科医にご相談ください。

(県歯科医師会)