歯科医療からみた「食育」

 

 かむことが健康の基盤

 食育とは、一人一人が、生涯を通じた健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の維持が図られるよう、自らの食について考える習慣や食に関するさまざまな知識と、食を選択する判断力を身に付けるための取り組みを指します。よって、食育とは、幅広い内容を含んでいます。ここでは、歯科医療の立場から考える食育・特にかむことについて述べたいと思います。かむことはとても重要で、まずかむことによって、だ液の分泌がよくなります。だ液には、消化を助け、口腔(こうくう)内を清潔にする働きがあります。

 また、かむという機械的な刺激が、頭や顎(あご)の骨、顔の筋肉の発育を促し、表情豊かな顔をつくるほか、大脳の働きを活性化します。さらに歯の健康とメタボリックシンドロームは、深く関係があるといわれています。糖尿病と歯周病との関連や、よくかむことで肥満解消・予防に効果的であることも確認されています。よくかむということにより、満腹感が得られやすくなるため、食べ過ぎを防ぐためです。

 しかし、現代の食環境は、軟らかくてかむ必要の少ないものを消費者が好むため、かみごたえの少ない軟らかい食物が多いようです。食品の選び方や調理方法を変えるなどちょっとした工夫でかむ回数が増えます。また、よくかむことで、認知症の予防になるといわれています。よくかむためにはお口の中の状態が健康でなくてはいけません。そのために日ごろの歯磨きなどのお手入れはもちろん重要ですが、定期的に歯科健診を受けるとよいでしょう。

 よくかむということは、全身の健康の基盤であり、QOL(人生の質)に密接に関係しています。私たちは、むし歯・歯周病の治療・予防はもちろんですが、顎やかみ合わせについてもさまざまな取り組みをしています。おいしくものを食べ、「よくかむ」ことで快適な生活を過ごせるよう、われわれもお手伝いしていきたいと思っています。

(県歯科医師会)