咀嚼筋腱・腱膜過形成症

 

 顎関節症とよく似た症状

 歯科には開口障害を呈する疾患が多数あります。開口障害とは、口が開かなくなることをいいます。その理由は、顎(がく)関節と咀嚼(そしゃく)筋が歯科領域で扱われる臓器だからです。

 顎関節とは、上あごと下あごをつなぎ留める関節で、耳の前にあります。咀嚼筋とは、物を噛(か)むために使われる筋肉で、あごの周囲にいくつか存在します。

 開口障害を起こす代表的な疾患は、親知らずが膿(う)んでしまう智歯周囲炎などの歯性感染症と顎関節症です。歯性感染症の場合、歯が痛くなったり歯の周りが腫れたりして、比較的容易に判断がつきます。一方、顎関節症にはさまざまなものが含まれ、病態も多様化しているため、診断が難しいこともしばしばです。

 最近になり、顎関節症と思われていた疾患の中に、咀嚼筋腱(けん)・腱膜過形成症という疾患が含まれていることが分かってきました。咀嚼筋の腱や腱膜が過形成されることにより、咀嚼筋がうまく伸びなくなる疾患です。顎関節症の一型とよく似た症状のため、顎関節症として治療されたことも少なくありませんでした。現在では比較的診断も容易で、手術で症状が改善されることが多いのも分かっています。

 開口障害があり、通常の顎関節症の治療に反応しない場合、これらの疾患も疑い、お近くの歯科医院に相談してみてください。

(県歯科医師会)