口腔ケア

 

 介護領域で重要性見直し

 「口腔(こうくう)ケア」という言葉をご存じですか? 口腔ケアと聞くと口の中をきれいにする(磨く)ことと想像するでしょう。

 口腔ケアとは主に、老人介護施設や居宅介護の現場で使用される言葉で実際、行われています。口腔ケアを行うことでQOL(quality of life)=生活の質=の向上を目指す目的の下、ただ口の中をきれいにする(磨く)だけではなく、虫歯や歯石の除去、不適合になった入れ歯の修理、清掃、高齢に伴う唾液(だえき)の減少への対応、嚥下(えんげ)や咀嚼(そしゃく)機能の改善などさまざまな内容が含まれています。

 また、口腔ケアを行うことにより誤嚥(ごえん)性肺炎を防ぐことができます。以前は、あまり口腔ケアは重要視されていませんでした。なぜなら口の中が磨かれていなくても命には別条ないと考えられていたからです。しかし、高齢化社会となり介護領域が注目されるようになった近年、口腔ケアの重要性が見直されてきました。その代表例が「誤嚥性肺炎」です。

 老人性肺炎を起こした人の多くは、寝ている間に通常食道へ流れていく唾液が何かのはずみで肺に流れてしまったときに起こるものです。口の中には多くの口腔内細菌があり、これらが呼吸器の奥深くまで入り、かつ抵抗力が低下している場合には肺炎による生命の危険が非常に高まります。肺炎を繰り返す場合には、口腔内が不衛生であることが考えられます。

 口腔ケアを行うことにより、誤嚥性肺炎に関連する発熱と肺炎および死亡者数が減少するということが近年報告されていることから、ますます質の高い的確な口腔衛生の管理が求められることでしょう。

(県歯科医師会)