「かむ力」 強すぎると折れる場合も

 

 両耳の少し下、あごの角の斜め少し上を人さし指で触りながらグッと食いしばると、力こぶができるのが分かります。これが咬筋(こうきん)で、かむときに最も力を出している筋肉です。

 手足の骨と同じように骨に付いていて、あごの骨を動かす筋肉なので骨格筋の一種。顕微鏡で見ると細い筋が見えるので、横紋筋(おうもんきん)とも呼ばれます。また、自分の意思で自由に動かせる随意筋でもあります。

 食べるときには、口を大きく開けてからかみ始めると思います。咬筋は一度伸びた状態から縮むときに、最も力が出せるようにできています。体のほかの臓器で、一度伸びてから縮むといえば心臓ですが、咬筋の構造や働きには心臓の筋肉とよく似たところがあります。

 心臓が弱るのと同様、ものがかめなくなると命に関わります。年齢を重ねても咬筋は弱りにくく、咬合(こうごう)力(かむ力)も急には落ちません。

 咬合力には生まれつきの個人差があります。咬合力が強いほど長年にわたってよく食べ物がかめるかというと、そうでもないのです。咬合力が強すぎると入れ歯が何度も割れたり、歯そのものが折れてしまうことさえあります。

 そのような経験のある方は、歯科医院でチェックしてもらってはいかがでしょうか。

 (県歯科医師会)