「片咀嚼」 誤嚥性肺炎の危険高く

 

 よく患者さんから「右の奥歯がないから左でばかりかんでいた」という悩みを聞きます。通常、私たちが食事をする時は左右どちらかの一方で数回かみ、食べ物が舌の上を移動して、その反対側でかみ、左右交互にかむ側を交換しながらものを食べます。

 もし、片側の歯が何らかの原因でなくなってしまった場合、左右両側でバランスよく食べることができなくなります。かめる側だけでかむ「片咀嚼(へんそしゃく)」という状態になります。そうなると口の中ではどのようなことが起こるのでしょうか。

 片側の歯ばかりでかんでいると、かみ砕いた食物は舌の上にうまく運ばれず、頬側の空間に食べ物がたまりやすくなります。つまり食べたものがなかなかのみこめずいつまでも残り、口の中は不潔な状態になります。その結果、かめる側でもむし歯や歯周病が進行しやすくなり、特に高齢者がこのような状態が続けば誤嚥(ごえん)性肺炎を引き起こす危険性が高まります。また、かみ合わせのズレによる頭痛や肩こりなども知られています。

 片咀嚼を予防するには両側の歯でかめるよう口の中の治療を受けることが大事です。片側の奥歯が抜けている場合などは、そこに義歯などを入れて左右両側でかめるような状態にします。かかりつけの歯科医と相談して片咀嚼がないよう治療を受け、お口を健康な状態に保つことが大切です。

 (県歯科医師会)