平均寿命延び、がん問題に

 

 放射線を大量に浴びることで、がんが増えるのではないか、と言われることがあります。がんについて知るために、少しその歴史を振り返ってみたいと思います。

 人のがんの記録は古代エジプトの文章の中にも見られます。しかし、平均寿命が30歳とか40歳くらいであった長い歴史の間、命を落とす原因として、がんが大きな問題になることはありませんでした。災害や飢饉(ききん)、栄養失調、感染症、部族間の闘争・戦争、事故など他のさまざまな原因の方が問題だったのです。

 第2次世界大戦直後のわが国の平均寿命は男女ともに50歳くらいでした。しかし、経済や科学技術が発展し、飢餓や感染症を克服するとともに平均寿命は延び、現在では男女ともに80歳を超えていることはご存じの通りです。

 平均寿命の延びに伴い健康にとって、がんは大きな問題となりました。わが国では1981(昭和56)年以来、心臓や脳をおさえて死因の第1位です。2016年のがん統計によると、男性では肺、胃、大腸、女性では大腸、肺、膵臓(すいぞう)の順に、がんで命を落とされる方が多いことが報告されています。