がん研究、煙突掃除が最初

 

 放射線を大量に浴びると「がん」になるのではないか?と言われることがあります。「がん」について知るために、少しその歴史を振り返ってみたいと思います。

 18世紀の末、イギリスの外科医であったポットは、ロンドンの煙突の掃除人の間で陰のうのがんが多いことを見つけました。彼は煙突にたまっている「すす」が皮ふを刺激し続けることががんの原因ではないかと考えました。これは化学物質ががんの原因となることを示す最初の研究でした。

 ポットはそのがんの発生には、〈1〉「すす」による刺激の量が多いこと(たくさんの「すす」にばく露すること)、〈2〉「すす」に触れている時間が長いこと(ばく露が長期間にわたること)、〈3〉たくさんの「すす」に接してからがんが発生するまでには数年以上の期間があること―などを報告しました。

 この考え方はたばこや放射線によるがんの発生と通じるところがあります。たばこを1本吸ってすぐに肺がんになるわけではありませんが、何十本も何十年吸うのは身体には良くないです。放射線の体への影響も、「放射線を浴びたか浴びていないか?」ではなく、「どれくらい浴びたか?」という「量」の問題です。