次世代へ遺伝的影響なし

 

 放射線を浴びることで、これから生まれてくる世代に影響があるのではないかと心配される方がいるかもしれません。しかし、今回の事故による放射線によって、次世代への遺伝的な影響を危惧しなければならない状況には全くありません。

 放射線によって精子や卵子などの生殖細胞に傷が付けば、遺伝の影響はあり得るのではないかと思われるかもしれません。どうして危惧する必要が「ない」のか、いくつか理由を挙げたいと思います。

 まず一つは、広島・長崎での原爆投下後、生まれてきた世代(被爆2世)の健康に関して、遺伝的な影響が見られなかったことです。

 広島・長崎では終戦後から継続的に、7万人を超える出生児の健康状態が調べられました。その結果、両親が原爆による放射線を多く受けた場合とそうではない場合を比べて、出産前後の期間での異常、早期の死亡、染色体の異常や突然変異、遺伝性の病気などについて数が増えることはありませんでした。

 両親併せて生殖細胞に放射線を浴びた量は平均で数百ミリシーベルトだったことが言われています。これは今回の事故による量と比べて桁違いです。桁違いに多い場合でも影響が見つからなかった。これが遺伝的な影響を危惧する必要がない理由の一つです。