健康のために声掛け合う

 

 今回の震災および原発事故の後、放射線被ばくによる身体への影響は、さまざまな検査や対策が必要となる最も重要な健康問題のひとつでした。しかし実際には、放射線被ばくの「量」が大きくなく抑えられたこともあり、原発事故による健康の問題は、放射線が直接身体に当たること以外にも目を向けていく必要があります。

 放射線以外で健康にとって重要な事柄の一つが、診療行動(病院にかかるか、かからないか)の変化です。例えば、朝起きると同居人が「頭が割れるように痛くて、気持ち悪い」とうずくまっていたとしましょう。きっと、皆さんは周りに助けを求めたり、病院に行くことを手伝ったりすると思います。では、一緒に暮らしていなかったらどうでしょうか。手助けするチャンスが減ってしまいます。

 私たちの調べでは、震災後に同居人がいない乳がんの患者さんでは、同居人のいる患者さんに比べて、身体に異常を感じてから病院を最初に受診するまでの時間がやや遅れ、病気が進行してから病院にかかる傾向にあることが分かっています。震災後の環境の変化で、知らず知らずのうちに、病院にかかる行動が変化してしまっているのです。

 日ごろからお互いに声を掛け合ったり、地域で交流したりすることが健康のためにもますます重要になっています。