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執筆者:柳沼信久(やぎぬまのぶひさ)
特定・特別医療法人福島厚生会
福島第一病院
消化器科部長
    
郡山市出身。東北大学医学部卒。H11年1月、福島第一病院消化器科部長に就任。火・木の午前外来診療を担当。

(1)長引いた咳が出る状態とは?
 最近慢性に長く続く咳を訴えて病院を受診する人が増えています。このため慢性咳嗽(医学用語で咳を咳嗽といいます)に関するガイドラインも作られており、その本態も治療も次第に明らかになってきました。今回は咳喘息といわれる病態を概観してみましょう。

(2)湿性咳嗽と乾性咳嗽
 痰が多い状態で痰を排出するための咳を湿性咳嗽といい大部分が副鼻腔と気管支の慢性炎症に伴うものです。これに対して乾性咳嗽は痰のほとんどない文字通りの乾いた咳です。胸部X線写真やCT上肺炎やそのほかの疾患を認めずに数週間も長く乾いた咳が続く疾患として多いのが咳喘息、アトピー咳嗽、風邪症候群後持続性咳嗽(風邪をひいた後に咳が長引く状態)の三者です。

(3)慢性乾性咳嗽を起こす三疾患の違いは?
 咳喘息、アトピー咳嗽、風邪症候群後持続性咳嗽の3者を始めから厳密に区別することは困難です。特異的に効果のある薬剤はありますが、治療的診断といって治療効果を見ながら疾患の本態に迫ることになります。とはいってもこの3者にはよく似たところがあります。

(4)咳喘息とは?
 喘息の症状のようにぜいぜいという喘鳴は認めませんが、気道の過敏性が高進しており、気道が容易に咳発作を起こしやすい状態が病態の基本です。気管支拡張薬が治療に効果を発揮しますが、いわゆる咳止めだけの処方ではほとんど効果がないことが問題で、しかも放置するとこの疾患の40%が典型的な喘息に移行してしまうことも問題です。
 治療としては典型的喘息と同様の治療を選択して早期に咳発作を終息させその病態から解放してやる必要があります。気管支の壁には好酸球性の炎症がみられることも分かっているため、アレルギーを引き起こしやすいこの炎症を解消することが大事です。好酸球は気道を収縮させる、さまざまな化学物質を放出して気道を過敏な状態にしていると考えられます。

 さまざまな喘息治療薬があり、トロンボキサン阻害薬、ロイコトリエン拮抗薬、さまざまな抗アレルギー薬などがそれぞれ気道過敏の状態を改善することは明らかですが、気道の好酸球浸潤という本来の病態を解消させるためには吸入ステロイドといって微量のステロイドが気道全体に届くように工夫された吸入薬を使用することが一番望ましいと考えられます。さまざまな抗喘息薬を使えばそれなりの効果を発揮して、咳喘息が治ってしまうこともありますが、症状が頑固で長引くようなら吸入ステロイドを早期に使う必要があるでしょう。

 アトピー咳嗽では抗ヒスタミン薬が効果的ですが、やはり効果不十分な場合はステロイド吸入も必要になります。風邪症候群後持続性咳嗽は風邪の後の治らない咳としてしばしば経験されることですが、基本に気道過敏性の高進があることは明らかでいわゆる咳止めだけでは全く効果のない場合が多いので、いたずらに咳止めだけを処方されている場合にはすみやかに呼吸器の専門医と相談すべきでしょう。咳喘息と同じ素因が風邪をひいた後に表に出てきたと考えられる症例が多数みられます。この場合はもちろん典型的な喘息の治療を受けて早期に病態からの離脱を図る必要があります。

(5)長引いた咳は放置しないこと
 長引いた咳には気道の過敏な状態(喘息と同じ病態)がその裏に隠されている可能性があり、それを常に念頭において対症療法(咳止め)よりも原因療法を早期に受ける必要がある場合があることを認識しておきましょう。

ME&YOU2月号より
 



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